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小説『Endless story』#5-3

 #5-3【見つめ合うと素直にお喋り出来ない

 

 

 

 いわゆる「友達」の定義とは、いったい何なのだろう。

 

 たかだか1回いっしょに遊んだだけで友達だと思われても困る、と言うヒトもいれば、顔つき合わせてごはんを食べればもう友達だ、なんて言うヒトもいる。友達なんて概念はまやかしだって言うヒトも居れば、なんとなく互いの間で、そういう関係を認識していくモノだというヒトも居る。

 

「やめとこうよ。だってユカリちゃんって暗くて、いつも何考えてるかわからないもん」

「××は、どうして友達を作らないんだ? これでも先生は心配して――……」

「あたしだって嫌だよ。いいじゃん、別に本人が好んでいつもひとりで居るんだし」

「あんたに友達なんて出来るワケないじゃない。暗いし愚図だし、その上に私の娘なのよ?」

「ええと……いつも教室で寝てる子、名前なんだっけ?」

「この日シフト入ってくれないかな、××さん。どうせ休日だしヒマでしょ?」

 

 いずれにしても、私と全く無縁の言葉だというコトだけは分かりきっていた。

 だからこそ、まったく現状が呑み込めない。

 

 落ち着いていったん整理してみよう。

 まず私は、ルベルのマイルームへ戻るためにロビーをうろついていました。そうしたら、この白髪に赤目のアリシアという少女――私と同じ地球人だと言っていたから、この髪色、目の色、色白な肌はいわゆる「アルビノ」というモノだろうか――に、いきなり「友達になってくれませんか!」と言われて。

 立ち話もなんだし、だからってカフェへ行こうにも、あいにく私は持ち合わせがない。というか、お金……メセタを持っていたとしても使い方が分からない。仮想通貨は、それ自体を渡せばいいってモノではないから、実際は割りと不便だと思う。

 そこで、アークス・ロビーの一角、階段のようになっている箇所へ、ふたりして並んで腰かけてみたまではいいものの。

 

 なんとなく気まずい空気、話題の切り口も見つからず、そもそもどっちから話しかけるべきなのか。話しかけてきたのはアリシアだから、彼女が話すのを待つべきなのか。それとも友達にうんぬんの返事を、私がするべきなのか。

 しかしアリシアも、何を言えばいいのか以前に、ずっと目線を背けている。おそらく、その顔は緊張と恥ずかしさで真っ赤に染まっていることだろう。

 

 そもそも、友達になってくださいと言われて、私はどう返事をするべきなんだこういうとき。

 もちろん理由なく断ってしまえば相手に悪いだろうし、というかその場合アリシアの心が折れてしまうのではないか。

 でも、いきなり「なりましょう」って承諾してなるようなモノなのだろうか、だいたい友達ってなんなんですかゲシュタルト崩壊、ひらがなで書くと国会議員になって毒ガスで人類滅ぼして覆面つけて「あそびましょ」とか言って自分の名前の新暦作りそうな響き。

 そうだ、まずはいろいろと訊いて話してみよう、まずは相手を知らなければ何も始まらない、たぶんそういうモノだ、でも何から聞けば、そうだ何県出身なんだろう、そもそもたぶん日本人だよね、ええいとりあえずかましたれ、頑張れ私。

 

「あのっ!」

「あ、あのっ!」

 

 盛大にタイミングが被りました。

 ふたたび、ふたりの間に沈黙。

 見つめ合うと素直におしゃべり出来ない。津波のような気まずさと、あと羞恥心。

 

「え、えっと……お先にどうぞ……」

「いえ、そっちから……先に……」

「……何やっているのよアナタたち」

 

 私とアリシア、ふたりの頭上から投げかけられた、聞き覚えある声に顔を上げる。

 毛先が紫で、長い白髪をツインテールにまとめた、赤い瞳の――ルベルが、そこに居た。

 

「あ……ルベル、さん」

「ルベルさん、身体はもう治ったんですか?」

「お陰さまでね。手足の骨折だけだから、そんなに大したケガでもないけれど」

 

 骨折を「だけ」と称する辺り、いかにオラクルの医療技術が尋常でないか伺える――と思ったけれど、単にそういうワケでもないらしい。地球人とはいえど、オラクルの先輩であるアリシアもちょっとひきつった表情を浮かべていた。

 

「相変わらず、回復が早いですね……」

「まあ……少し、わたしの身体は特別製だから」

 

 少し逡巡したあと、ルベルがあえて言葉をぼかしたコトをなんとなく察した。なので、私も気にはなったけれど、それ以上追求しない。

 

「それでさっきの質問に戻るけれど、ふたりで何をしていたのかしら。先にマイルームへ戻ってみても、ユカリはまだ帰っていないようだから、ここまで探しに来たのだけれど」

「あ……ごめんなさい、少しアリシア……さんと話し込んでいて」

「その割りには、とてもぎこちない空気だったわよ」

 

 苦笑いしか出てこない。

 ルベルは私とアリシアの顔をじっと見た。少し何やら考え込んだ様子で居たが、不意に中空へディスプレイを出現させると、チームに向けて呼びかけた。

 

「ちょっと良い? 今から凍土へ、ギャザリングしに向かおうと思うのだけれど……誰か付いてくるヒトは居ないかしら?」

『ついて行くにゃ』

『ほな、私も行きまひょか』

『すまん! 社長に呼び出されていて……今めっちゃ忙しい!』

『同じく……本当にウチの社長は、人遣いが荒いんだから……!』

『ふたりに同じネ』

『ほう、凍土か。リングを作ろうと思っていたところだし、ロゼも誘って行くとしよう』

『私、お弁当作っていきますね』

『じゃあ、私もとりっぴーを手伝います』

『あっあっすみませむぅ今ウィリディスさんと地球に居て……』

『やはり凍土ですか……私も同行しましょう。いつ出発です?』

『スプラウト』

 

 飛び交うチームチャットが、さらに賑わう。

 呆気にとられる私を横目で見ると、ルベルは素っ気なく表情も変えずに……でも、どこか楽し気な声色で言った。

 

「辛気臭い顔していないで、支度なさい――わたしの快気祝いというコトで、少し遊びに行くわよ」

 

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