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小説『Endless story』#5-1

#5-1【有栖李子】

 

 

 

 有栖季子(アリスリコ)は地球人で、周りからは『アリシア』もしくは『アリー』との愛称で呼ばれている。

 

 性格は極度に内気。

 理由は分からないが、どうやら周りにも距離を置かれているらしい――実際には生まれつき色素の薄い白髪と、オッドアイを隠すための眼帯という人目につく容貌が、おいそれと話しかけにくい雰囲気を出していただけなのだが――ので、通っていた高校でも友達が出来たことはなかった。

 

 あれやこれやを経てオラクルへやってきた彼女は、更になんだかんだあって、ひとまず今はアークスとして活動している。

 苦闘しながらもアークスとして日々成長を遂げ、地球では出会えなかったろう仲間たちにも恵まれた。世界群歩行者達というチームの中で、彼女は確かに居場所を見出し始めている。

 そんな彼女には最近、気になっているヒトが居た。

 

 ホログラム状のディスプレイを開けば、今日もチームチャットは会話で賑わっている。最初こそオラクルの各種テクノロジーに戸惑ったが、どこの文化も「扱いやすいモノ」に関する観念はほぼ同一らしく、今ではすっかりと馴染んでいた。

 

『あるとん商店、新商品入荷したにゃ。入用の際は気兼ねなく呼びつけるにゃん』

Wonder land partyの新作アウターウェアが気になっているんだけれど、在庫あるかしら』

『当たり前だにゃん、なんなら今回はフンドシもあるにゃ』

『バカな! マイショップ(個人商店)では軒並み高額で出品されていて入手が超困難な、ぶっちゃけて言えばだいたいの男性用コスチュームより希少なフンドシまで!?』

『さすがあるとん! 俺たちには出来ないことを平然とやってのけるッ!』

『そこにシビれもしないし憧れないけれど、私は新しいキャスト換装用パーツが気になりますね』

『あっあの打撃力とフォトン増強用のデバイスはありますかむぅ』

 

 アルトはアークスとバイヤーを兼業しているらしく、定期的に新たな商品を入荷してはチームメンバーに割安で売るのが恒例である。

 アルーシュが欲しがっている服もそうだけれど、今回は確か正統派なゴシックロリータの服も入荷する予定だったハズなので、アリシアはもっぱらそちらが気になっていた。

 学校と違って制服も無ければ、少し派手な格好をしたところで、変な目で見られることも無いのはアークスの特権だろう。

 

 ――ところで、どうやら今日もアリシアが気になっているヒトは出てこないらしい。

 

 ユカリは半月ほど前、ダーカーから襲われていたところを家主さんに保護されたという。その過程には色々と不自然な点が多いらしいものの「地球からオラクルへ来た一般人少女」という点で共通する彼女に、アリシアは興味があった。

 何せ世界群歩行者達のメンバーはみんな愉快で、良くしてくれる人ばかりなのは確かであるが、どうしても「友達」というよりも「先輩」という感じがして、なんとなく一線を引いてしまうのだ。

 だからどこか、同じ目線で気兼ねなく話せる友人を欲していたのかもしれない。

 

 しかしアリシアの任務もここしばらくは忙しかった上、向こうも検査や戦闘訓練などで話しかける機会すらもなかったというのが実情である。そしてようやくひと段落ついたが、当のユカリが居ない。

 

 アークス・ロビーからほど近い市街地への、ダーカー襲撃が沈静して3日。口数が多い方ではないと言えど、挨拶だけは毎日きちんとしていたユカリの姿をロビーでもチャットでも見ていない。

 ダーク・ビブラスによる奇襲を受けて大ケガを負ったらしいルベルも、検査を経て今朝がた退院したらしいが、どうやら彼女に付き添っていたというワケでもないようだ。

 ではまだ訓練が続いているのだろうかとも考えたが、ナーシャが言うには、彼女による訓練は襲撃があった前日に終了しているとのことだった。

 

 初めての実戦で思うように動けず、自信を喪失してしまうアークスは多い。士官学校を卒業したアークスの中にも、それが原因で初任務を終えてすぐ引退してしまうヒトは毎年何人かいるらしい。

 しかし、聞けばユカリはダーク・ビブラスの爆弾を砕き、爆発を未然に阻止するという活躍をしたらしい。初めての実戦、ましてやイレギュラーな事態に対応してみせた彼女は既にチーム内でも一目置かれている。

 だからこそ突然ふさぎ込んでしまった彼女はチーム内でも心配され、不思議に思われていた。

 

 かくいうアリシアも彼女を心配する一方で、どうすれば良いか悶々としている。

 こういう時はむしろそっとしておいた方がいいともいうし、そもそもアリシアとユカリは一度も直接に話したコトがない。

 やはり藪から棒に、心配だからと言って声をかけるのは不自然なように思えた。ましてアリシアは活発でもなければ社交的な方でもない。

 ユカリがここへ来てから何かと世話を焼いているらしいルベルも戻ってきたことだし、あとのコトは彼女がどうにかするかもしれない。

 でも一方的にとは言えど心配ではあるし、同じ地球出身の自分にこそ話せるモノもあるのではないか、いやでも。

 などと自問自答を繰り返しながらロビーをうろついていると――。

 

 ――前方に、うつむきながらフラフラと歩いているユカリの姿があった。

 

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