私のトモダチ達 2章 子羊を導く者 7
ナナさん!大変です!
私の耳に入る騒がしい声。椅子から立ち、後ろを向く。
ピンク色の髪に、黄色の瞳、そしてピンク色の制服を着て私を見ていた。走ってきたのか、息を荒げながら口を開いた。
「リアさんの位置情報が途絶えて…ナナさんの言うとおりにやりました…でも…」「ジャミング」「へ?」ラァイアは口を開けたままポカーンと立っている。新人だ、ジャミングを知らないのも当然だ。「でっ…でも…ダーク・ファルス戦でも通信は途絶えないんですよ!?おかしいですよ!!」「相手が特殊なの…水色の髪の少女がね」
…
ナナさんは確かに優秀な先輩で、新人の私なんか足元にも及ばない。でも…あんなに冷静なのは…まるでそうなることが最初から分かっていたような。
「用は以上?」「はい…では失礼しますっ!」
結局緊張に耐えきれず、扉を出て部屋を後にした。「私が…未熟だからそう見えるのかな…?」そう自分に言い聞かせた。そうすれば自分の未熟さを痛感し、成長出来る気がしたから。
「フナさん…なんで逃げるの?」
麻衣がダーク・ファルスなのは分かっている。でも、私の銃は麻衣を狙ってはいない。彼女を殺すのが怖いからだ。
「…なら、私がフナさんを楽にしてあげるから…私の側にくれば戦いなんてしなくていいんだよ?」
「っ…!」
「まだ戦うの?フナさん…」
ガランと何かが落ちた音が響く。武器を地面に捨て、手を広げる麻衣。優しく微笑みながら私に一歩ずつ近寄る。彼女の唐突な行動に私は身構えていた。
「警戒しなくてもいいの…フナさん…ね?」
私は…トリガーを引いた。ほぼ反射的にだ。乾いた音と共に放たれた光弾は麻衣のお腹に直撃して赤い血を散らせた。
「がほっ…」弱々しい声と共に吐血した麻衣。そしてそのまま地面へと倒れ込んだ。全身を支える力を失ったかのように。
「げほっ…フナさん…痛いよ…」倒れたまま、お腹に手を当てる麻衣。一瞬で思考がショートした。
私の頭には麻衣を助ける事しか頭に残らなかった。倒れた麻衣に駆け寄り、彼女の手を両手で握り締めた。
「なんで…麻衣はアークスじゃないの…?なんでダーカー側なの?どうして!?」「ごめんなさい…フナさん…私はね?」
私は麻衣を抱きしめ、私も決意した。「麻衣がそっちにいるなら私も…行くから!」私が与えた傷跡に手を添えて、片手でぎゅっと抱き締める。それだけで涙が止まらなくなった。
…このままでいい…このままでいたい…
「えっ?」いきなり麻衣が私を突き飛ばした。
その数秒後に赤い光と紫色の光が麻衣を包んでいた。
私が顔を上げた時には高温で焼かれたのか、全身に火傷を負い、服が焼け、裸の麻衣が倒れていた。
「なんで?麻衣!生きてるよね?ねぇ…ねぇ!!」
返事はない。生きている…そう自分に言い聞かせた。そうしなければ私が壊れてしまうから。
がさっと草むらが動いた。その人物は私目掛けてテクニックのチャージを開始した。
「ラ・フォイエ」「エンドアトラクト!」二つの技が放たれたのはほぼ同時だった。
2章 子羊を導く者 END