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小説『Endless story』#1-4

 #1-4【あんまり急に笑うので】

 

 

 

「世界群歩行者達?」

「ええ。アークスはその中でも、互いの協力関係を築きやすくするために有志でチームを作るか、あるいはどこかのチームに所属することが多いの。そして私たちの居るチームがそれよ」

 

 私は今ルベルに連れられて、そのチームルームへ向かう最中だ。

 彼女が言うには、私はしばらくオラクルで身体検査を受けて経過を見ながら、その間は彼女らのチーム『世界群歩行者達』が私を保護するらしい。

 フォトン適性が高い地球人はダーカーの襲撃を受けるという前例もあったため、それに対する警戒の意味合いでもある、と言っていた。実際に検査の結果でも、私が持つ適性はかなり高かったようだ。

 

 しばらくオラクルに拘束される、ということ自体にはあまり抵抗がなかった。学校へは通っていない……というか中退してしまったし、バイトも1週間ほど前にクビになった。

 それらのことも、既にルベルには伝えてある。曰く「わたし達は地球人に対して必要以上の干渉は行わないわ。そして検査を終えた後、あなたがどうするかもわたしの知るところではない」とだけ返された。

 

 ロビーはゲームの中で見た通りの内装だったが、仮想空間の中ではなく実際に居るのだと思うと、どこか落ち着かない。

 白と灰色と黒、そして青い蛍光のラインとガラス張りで統一された内装。まさしく私はSFの世界に来てしまったんだなあ、と実感する。

 

 少し歩いていき、ルベルと2人でテレポーターに立つ。瞬きする間に、今度は全く別の広間に出ていた。

 色合いはロビーより暗めだろうか。そのぶん中央に立っている、柔らかく発光する緑の大樹が際立って見えた。壁にかけてあるマークは、チームのシンボルだろう。

 

 そこには多様な人々が居た。桃色の長髪に瞳が水色の女性、白髪に褐色肌の長身男性、真っ青な髪をポニーテールにまとめた眼帯の女性など……中には昨日の髪が赤いネコミミ少女・アルトも居た。

 彼女は私の視線に気づくと、ひらひらと手を振る。私もつられて少しだけ手を振り返す。

 

「連れて来ました、団長」

 

 ルベルは総勢20名ほどが集まったチームルームの奥に、深緑色の軍服を思わせる装いで佇んでいる男に声をかけた。男は軍帽を被っており、右目は髪に隠れている。

 

「ありがとう。……はじめまして。世界群歩行者達のマスターをしている『塊素(カイソ)』です。だいたいみんなからは『団長』と呼ばれているけど」

 

 その男――塊素はそう言った。

 

「はじめまして……ユカリです」

「怪我の方はもう平気なのかい?」

「あ、はい……おかげさまで」

 

 塊素は私の返事を聞くと、満足そうに微笑む。そしてひとつ咳払いをした。

 

「さて、ユカリさん。早速だけれどしばらく……具体的には1ヶ月ほどの間、僕ら世界群歩行者達が君の面倒を見ることになったのはルベルから聞いているかい?」

「はい」

「よろしい。すまないね、治療や検査だけでなく、その間に調べなくてはならないこともあるんだ」

 

 塊素が言う「調べなくてはならないこと」についてのくだりは初耳なので、首を傾げていると、察したのか続けて質問をされる。

 

「君が襲われた時、ダーカーが何匹居たかまでは覚えているかな」

「いえ、数え切れないほどに居ました」

 

 勿論、日常であれだけの数の何かに囲まれるということ自体がまずないため、大雑把な目算に過ぎないが……それでも蟲系、魚介系、有翼系、玩具系、すべて合わせれば、軽く見積もっても20匹以上は居たように思う。

 

「うん、それが異常なんだ。以前に何度かダークファルス【若人】の眷属が、依代を求めフォトン適性のある地球人を何度か誘拐した事件があった。けれど地上で一度に出現したダーカーの数と種類に限れば、今回はその比じゃない」

 

 ダークファルスとはダーカーの親玉であり、またダークファルスごとによって使役するダーカーの種別が違う。

 塊素に言わせれば、以前ダーカーが地上に現れた際には、ダークファルス【若人】という明確な元凶が居た。

 実際に襲来したダーカーもその眷属……蟲系のダーカーだけで、1度に1匹かその程度の出現だったらしい。

 

 だが今回は違っていた。確認されている限り全種のダーカーが集い、しかも数十匹単位が一度での出現。

 そして『偶然にも作戦区域へと紛れ込み、偶然にもダーカーに狙われて囲まれた私』。

 ……むしろ私に何らかの要因があると見たほうが、確かに自然なのかもしれない。

 

「君は検査の結果、非常に高いフォトン適性を持っていることが明らかになった。けれどおそらく、原因はそれだけじゃない。そういうワケでしばらくこちらの調査にも協力して欲しいんだけれど、改めて承諾してくれるかな?」

「はい……私からも、よろしくお願いします」

 

 頭を下げて、頼み込むポーズをする。

 正直のところはどうでも良かった。私が何かの理由でダーカーに狙われていて、それで殺されるとしてもあまり抵抗感はなかったからだ。そんなことを考え、頭を上げると――。

 

「……では短い間になるけど改めて、ようこそオラクルへ。そして世界群歩行者達へ!」

「ようこそ!」

「ようこそ! よろしくね、ユカリちゃん」

「ようこそ、世界群歩行者達へ!」

「ようこそそそそそそそそ!」

「よろしくにゃん」

「せかほにようこそ!」

「よろしく頼むぜ、相棒!」

「やぁ」

「ちくわ大明神」

「誰だ今の」

「なんかちょいちょい変なの混じってるんですけどォ!」

「よろしくね」

「……しばらくの間、よろしく頼むわ」

「世界群歩行者達へようこそ、ユカリ!」

 

 ――ちょっとだけ面を喰らってしまった。

 

 

 

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