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小説『Endless story』#1-2

 #1-2【Phantasy stars in universe

 

 

 

 目を覚ますと、やたらサイバネティックで無機質な部屋に居た。ここはどこだろう。

 昨日はいつ寝たんだっけ。そもそも私はなんでこんな場所に居るんだっけか。

 まだ寝起きで霞がかった頭で頑張って思い出そうとしていると、機械的で重々しい部屋のドアがプシューッと音を立て、スライドして開いた。

  

「目が覚めたのね」

 

 ドアの入り口に立っていたのは、眼帯を着けて黒いコートを着た、毛先だけが紫の白髪をツインテールにまとめた少女だった。頭には黒いツノのようなものがついている。

 

「気分はいかがかしら」

 

 気分はどう、と言われて、閃くように昨日起きたことを思い出す。 

 そう、昨日確か私は化け物に囲まれて、斬られて死んだハズでは……思い出して、服の裾をめくり自分の身体を見る。痛みは無く傷も塞がっている。ただ大きく生々しい傷跡が、肩口から脇腹にかけしっかりと残っていた。

 ……夢ではなかったみたいだ。あの化け物の大群も、私を助けた誰かも。

 

「自分の身に何が起こったかは思い出せたようね」

  

 少女はかつかつと歩み寄ってきて、私が横たわるベッドの前で……まるで手品のように、何もない空間から黒くて丸い椅子を生み出し、そこに腰掛けた。

 少しだけ驚く――初めて見たから、ではなく、見覚えがあったからこそ、だ。

 

「さて、まずは何から聞きたい?」

 

 少女は無表情のまま、私に問い掛けた。整った顔立ちに華奢な体躯と相まって、まるで人形のような姿だと思った。

 いきなり「何から聞きたいか」と言われ、少しばかり応答に困ったが、気になることは山ほどある。

 

「……ここはどこですか?」

「ここは船団『オラクル』に所属するアークスシップ9番艦、通称『ハガル』よ。平たく言えばあなたは今、宇宙船の中にいるの」

  

 言っている意味が理解できなかった。 

 困惑している私の心中を察したのか、彼女は私の後ろを指差す。 

 私の後ろにはカーテンらしきものがあった。らしきもの……と濁したのは何故か地味に発光していて、布の割には妙にのっぺりとした素材だったからだ。触り心地は布のそれに近いけれど……ともあれ、おそるおそる開いて外の景色を見る。そして絶句した。

  

 窓の外はすぐに宇宙空間。 

 広がる星々や星雲を背景に、数え切れないほどの白い宇宙船らしきものが並んでいる。一際大きな宇宙船を取り囲んで、一様に同じ方向を向いて浮いているその姿は、いつぞやネットか図鑑かで見た、魚が大群を成して泳ぐ光景を彷彿とさせた。

  

「綺麗」

 

 圧倒され思わずそう零してしまい、何か恥ずかしくてあわてて口をつぐむ。

 

「これでも疑う?」

 

 彼女はふぅ、と小さくため息をつきながら言う。

 私の身体には傷跡が残っていて、目の前には宇宙空間が広がっている。

 何もかもが現実離れしていて、正直まだ受け止めきれていない。しかし、逆にもう彼女の言葉を疑う理由もなかった。

 ひとまずは、彼女の言葉が真実であるとしなければならないようだ。

 

「……なぜ私はここに?」

「ダーカー……ああ、黒いバケモノに襲われたところまでは覚えているかしら」

 

 黙って頷く。

  

「瀕死の重傷を負ったあなたは、すんでのところで助け出され……でも、本格的な治療を行うには地球の設備では追いつかなかった。あたし達が地球で活動していることも、可能な限り知られてはならないしね。そこで、このアークスシップまで運ばれてきたって話」

  

 そうか、私は死ななかったのか。残念とも嬉しいとも感じなかった。 

 彼女は少し黙って、私の表情を見ていたようだったが、やがて足を組み直すと再び私に問い掛ける。

  

「他に訊きたいことはあるかしら?」 

「……あなたは『アークス』なんですか?」 

「あら、知っているのね」

  

 私は知っていた。オラクルも、ハガルも、アークスも、昨日の化け物『ダーカー』も。 

 宇宙をわたる航行船団オラクル。彼らの目的は数多の惑星を行き交い、降り立ち、調査し、そして星に巣食う宇宙の侵略者・ダーカーを駆逐すること。 

 そして、ダーカーを浄化することができる『フォトン』の力を扱える存在……それがアークス。

 彼女が今座っている黒いイスも、フォトンの力で形成されたものである。

 

 

 

 ――でもそれらは『ファンタシースターオンライン2』という、オンラインゲームの中の設定……つまりフィクションだったハズだ。

 

 

 

 しかし私はダーカーに襲われて死にかけ、オラクルまで担ぎ込まれ、こうして宇宙船の中でアークスを名乗る少女と話している。これらもまた、紛れもない事実。 

 つまり、私はゲームの中の世界に入り込んでしまったか、でもなければ――。

  

「……なにやら考え込んでいるようだから、わたしの方から簡潔にまとめてあげる」

  

 ハッとして、不意に声をかけてきた彼女の方を向く。その瞳は真紅で、まっすぐに私を見据えていた。

 

「オラクル、アークス、ダーカー……これらはあなたたち地球人の、空想の産物ではない。紛れもない現実よ。そして、あなたはその中に紛れ込んで来てしまった。――少しは現状を整理できたかしら、地球人さん?」

 

 

 

 

 

 

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コメント

アリシア・"9"・スターライト

めっちゃ面白いです!
引きこまれました!
続きを楽しみにしています!

  • 2016/04/07 18:49:12

Viridis

アリシアさん→
コメントありがとうございます。
これからも更新を頑張っていきたいと思います。

  • 2016/04/08 08:49:20

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