小説『Endless story』#1-2
- 2016/04/06 04:06
- カテゴリー:小説, PSO2, ゲーム, Endless story
- タグ:EndlessStory
- 投稿者:Viridis
#1-2【Phantasy stars in universe】
目を覚ますと、やたらサイバネティックで無機質な部屋に居た。ここはどこだろう。
昨日はいつ寝たんだっけ。そもそも私はなんでこんな場所に居るんだっけか。
まだ寝起きで霞がかった頭で頑張って思い出そうとしていると、機械的で重々しい部屋のドアがプシューッと音を立て、スライドして開いた。
「目が覚めたのね」
ドアの入り口に立っていたのは、眼帯を着けて黒いコートを着た、毛先だけが紫の白髪をツインテールにまとめた少女だった。頭には黒いツノのようなものがついている。
「気分はいかがかしら」
気分はどう、と言われて、閃くように昨日起きたことを思い出す。
そう、昨日確か私は化け物に囲まれて、斬られて死んだハズでは……思い出して、服の裾をめくり自分の身体を見る。痛みは無く傷も塞がっている。ただ大きく生々しい傷跡が、肩口から脇腹にかけしっかりと残っていた。
……夢ではなかったみたいだ。あの化け物の大群も、私を助けた誰かも。
「自分の身に何が起こったかは思い出せたようね」
少女はかつかつと歩み寄ってきて、私が横たわるベッドの前で……まるで手品のように、何もない空間から黒くて丸い椅子を生み出し、そこに腰掛けた。
少しだけ驚く――初めて見たから、ではなく、見覚えがあったからこそ、だ。
「さて、まずは何から聞きたい?」
少女は無表情のまま、私に問い掛けた。整った顔立ちに華奢な体躯と相まって、まるで人形のような姿だと思った。
いきなり「何から聞きたいか」と言われ、少しばかり応答に困ったが、気になることは山ほどある。
「……ここはどこですか?」
「ここは船団『オラクル』に所属するアークスシップ9番艦、通称『ハガル』よ。平たく言えばあなたは今、宇宙船の中にいるの」
言っている意味が理解できなかった。
困惑している私の心中を察したのか、彼女は私の後ろを指差す。
私の後ろにはカーテンらしきものがあった。らしきもの……と濁したのは何故か地味に発光していて、布の割には妙にのっぺりとした素材だったからだ。触り心地は布のそれに近いけれど……ともあれ、おそるおそる開いて外の景色を見る。そして絶句した。
窓の外はすぐに宇宙空間。
広がる星々や星雲を背景に、数え切れないほどの白い宇宙船らしきものが並んでいる。一際大きな宇宙船を取り囲んで、一様に同じ方向を向いて浮いているその姿は、いつぞやネットか図鑑かで見た、魚が大群を成して泳ぐ光景を彷彿とさせた。
「綺麗」
圧倒され思わずそう零してしまい、何か恥ずかしくてあわてて口をつぐむ。
「これでも疑う?」
彼女はふぅ、と小さくため息をつきながら言う。
私の身体には傷跡が残っていて、目の前には宇宙空間が広がっている。
何もかもが現実離れしていて、正直まだ受け止めきれていない。しかし、逆にもう彼女の言葉を疑う理由もなかった。
ひとまずは、彼女の言葉が真実であるとしなければならないようだ。
「……なぜ私はここに?」
「ダーカー……ああ、黒いバケモノに襲われたところまでは覚えているかしら」
黙って頷く。
「瀕死の重傷を負ったあなたは、すんでのところで助け出され……でも、本格的な治療を行うには地球の設備では追いつかなかった。あたし達が地球で活動していることも、可能な限り知られてはならないしね。そこで、このアークスシップまで運ばれてきたって話」
そうか、私は死ななかったのか。残念とも嬉しいとも感じなかった。
彼女は少し黙って、私の表情を見ていたようだったが、やがて足を組み直すと再び私に問い掛ける。
「他に訊きたいことはあるかしら?」
「……あなたは『アークス』なんですか?」
「あら、知っているのね」
私は知っていた。オラクルも、ハガルも、アークスも、昨日の化け物『ダーカー』も。
宇宙をわたる航行船団オラクル。彼らの目的は数多の惑星を行き交い、降り立ち、調査し、そして星に巣食う宇宙の侵略者・ダーカーを駆逐すること。
そして、ダーカーを浄化することができる『フォトン』の力を扱える存在……それがアークス。
彼女が今座っている黒いイスも、フォトンの力で形成されたものである。
――でもそれらは『ファンタシースターオンライン2』という、オンラインゲームの中の設定……つまりフィクションだったハズだ。
しかし私はダーカーに襲われて死にかけ、オラクルまで担ぎ込まれ、こうして宇宙船の中でアークスを名乗る少女と話している。これらもまた、紛れもない事実。
つまり、私はゲームの中の世界に入り込んでしまったか、でもなければ――。
「……なにやら考え込んでいるようだから、わたしの方から簡潔にまとめてあげる」
ハッとして、不意に声をかけてきた彼女の方を向く。その瞳は真紅で、まっすぐに私を見据えていた。
「オラクル、アークス、ダーカー……これらはあなたたち地球人の、空想の産物ではない。紛れもない現実よ。そして、あなたはその中に紛れ込んで来てしまった。――少しは現状を整理できたかしら、地球人さん?」
アリシア・"9"・スターライト
めっちゃ面白いです!
引きこまれました!
続きを楽しみにしています!