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小説『Endless story』#1-5

 #1-5【ようこそ、世界群歩行者達へ】

 

 

 

「東京の街中でいきなりダーカーに襲われたって聞いたけど、もう大丈夫なのかよ?」

「無理しちゃダメだよ、痛みや違和感があったらちゃんと誰かに言うこと!」

「えっあっはい、大丈夫です、今のところ……」

「しばらくしたら地球に戻るみたいだけど、これは一応入団ってことで良いのかな?」

「おっ祭りか?」

「例のアレはあくまで『新人研修』だからね?」

「いつも最終的にほぼ祭りみたいな雰囲気になっているじゃないですか」

「ああ、新人研修では新入団員に団長が色んな説明をするんだけどね」

「色んなとはまた随分曖昧な」

「チームの決まり事や簡単なアンケートとかだよ」

 

 なんだかんだてんやわんやわいわいがやがやにぎやかにぎやか。塊素の説明が終わるや否や、周りの空気がなにやら盛り上がって呆気にとられる。

 

「全く騒々しい……少しは静かにしたらどうですか。ごらんなさい、ユカリ殿も戸惑っておられる」

  

 ロングコートの襟もとで顔の鼻辺りまでを覆い隠している、壮年の男性が進み出てきた。蒼白な顔色に堅い口調とあいまって、厳格で真面目な雰囲気がある。少し委縮してしまう。

 

「申し遅れましたな、私は『スプラウト』です。以後お見知りおきを」

「ど、どうも、ユカリです」

「ご丁寧にどうも。早速ですが、非常に重要なことを訊いておかねばなりません――」

 

 目の前まで歩み寄られると、先ほどまで以上の威圧感と迫力があった。重要なこととは何だろうか、思わず固唾を飲む。彼――スプラウトが「訊きたいこと」とは。

 

 

 

「――スリーサイズを教えてフゴブゥッ!?」

「言わせないわよ!?」

 

 最後まで言い切る前に、ルベルの強烈なハリセンによる一閃がスプラウトを後頭部から撃ち抜いた。

 

 

 

「上から順に――!」

「そこ! なんであなたが答えようとしているのよ人妻!!」

 

 あのそのいよいよもってどういう状況なんですかこれは。オラクルに飛ばされてきたと思ったら何か大真面目な話かと思ったらスリーサイズ聞かれてハリセンで上から順に人妻で。ちょっと自分でもだいぶよくわからない。

 ひとまずちらりと助けを求める意味合いでアルトの方に視線をやると、なんか向こうで何人かと一緒に踊っている。踊ってる場合じゃないですよ。

 

「え、えっとスリーサイズは測ったことがないので……」

「ユカリ、真面目に取り合わなくて大丈夫だから」

「なるほど測ったことがないアルか。それでは仕方ないから直に触って確かめてみるヨ」

「ギャッ!?」

 

 いきなり背後から腕を回され、胸を触られて飛び上がる。

 思い切り悲鳴まで上げてしまった。

 

「なるほどネ。慎ましいけれどこれはこれで中々……おっと危ない」

 

 ハリセンの軌跡が背後を掠めていく。風を切る音が妙に鋭く少しだけヒヤッとした。

 後ろを振り向くと、紫色の髪をドリル状に巻いた黒いドレスの女性が、ニヤつきながら手をわきわきさせている。

 犯人コイツか、そして慎ましくて悪かったな。

  

「ルベル、ハリセンといえど中々に生命の危機を感じたアルヨ」

「今のはクラリスさんが悪い!」

 

 紫色のロールヘアに黒いドレスの女性は『クラリス』というらしい。

 色々気を付けておこう。

 

「いきなり騒がしくてゴメンねぇ、まあいつもこんな感じだけど!」

 

 さっきの即座に自分のスリーサイズを暴露しようとした人妻さんが進み出てきた。

 

「合ってるけど酷い覚えられ方してる気がするから自己紹介するわね、私はアルーシュ。これからしばらくの間よろしくね、ユカリ!」

  

 彼女――『アルーシュ』は言うと手を差し出してきたので、私も慌ててそれに応じる。桃色の髪に水色の瞳が印象的だった。

 

「ところで団長、新人研修は結局やっておくの?」

「そうだな、やっておくか。ユカリさん、今から時間あるかな?」

「は、はい!」

 

 周りの雰囲気に釣られてか、私の語勢はいつもよりも明らかに強めだった。アルーシュに「いい返事だねぇ」と笑顔で言われて、何か気恥ずかしくなってしまう。

 新人研修と聞いて、更に何人かの人がチームルームへ入って来た。新人研修の時には、いつもこうして新しい仲間を一目見ようと多くのチームメンバーが集まってくるそうだ。

 そうして必然的に、いつもなんだかんだでお祭り騒ぎになるらしい。

 

「おほーっ、新人さんですかな」

「こんにちワンダ!」 

「活気あるのはいいことだけど、説明が聞こえる程度には落ち着くように。特に既存団員!」

 

 個性が強すぎる面々に、終始ハイテンションの空気。私は全く慣れない雰囲気に当惑し、圧倒されながらも……何か、上手く言い表せない新鮮さのようなものを感じていた。

 後に私はその「新鮮さ」の正体に気付くワケだけれども、今はまだ先の話。

 

「さて、それでは新人研修を始めますっ」

 

 いくつかのチームルールと一緒に聞いた、世界群歩行者達のモットー『この世界に足跡を残すこと』その本当の意味も、今はまだ漠然としたまま。

 かくして、私のオラクルで――『世界群歩行者達』で過ごす日々が始まった。

 

 

 

Chapter1『Living UniverseEnd.Next『#2-1』

 

 

 

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コメント

しるきー

いつもの如くチムルでワイワイしてる感じが再現されてて
とても好きだわゾ~!
キャラたちの話し言葉も違和感ないあたり、よく観察してるなあと思いました(こなみ)
で、私のスリーサイズは( 'д'⊂ 彡☆))Д´) パーン

  • 2016/04/27 15:02:45

alto

では改めて上から順にどうぞ

  • 2016/04/29 20:27:41

Viridis

しる姐⇒
コメントありがとうございます。
後頭部からルベルのハリセンをどうぞ。

あるとん⇒
コメントありがとうございます。
な ぜ 改 め て 言 わ せ た し

  • 2016/05/02 06:18:35

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