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カテゴリー[そのに] 文章を書く


◆文章を書くこと

 文章を書くためには言語の知識を持ち、ともかく書ける状態であればいくらでも書けます。ただし、その内容に“意味”を持たせるにはちょっとそれだけでは物足りない。これにはそれなりの研究、修練が必要だったりします。
 そういう訳で、書く前に読みましょう。色々な本を読み、そこに込められた意味を考えてみましょう。そうして、言葉の知識をため込みながらも「何を書きたいのか(言いたいのか)」をはっきりさせましょう♪



1.文は美しく、リズム良く!



 文はすらっとびしっと美しく優雅に。それを常に心がけねばなりません。例えば、句読点が文章の中にたくさんあったとしたらどうですか?


◆◆◆例文◆◆◆

♭例文A

 「謎」は、それを「謎」だと、認識して、初めて、謎となる。手を、手と、認識するところに、謎は、ない。手は、どんな物質でできているのか、と思う事で、初めて、「謎」が、生まれる。
 「謎」は、無数にある、と、言われている。生命、大地、地球、宇宙。けれども、初めから、そこに、謎が、存在した、わけではない。人間が、「謎」を、次から、次へと、創りだすことで、「謎」が、ある、と、信じているのだ。謎を、誕生させたのは、神でも、なく、宇宙でも、なく、人間自身、なのである。


♭例文B

 「謎」はそれを「謎」だと認識して初めて謎となる。手を手と認識するところに謎はない。手はどんな物質でできているのか、と思う事で初めて「謎」が生まれる。
 「謎」は無数にあると言われている。生命、大地、地球、宇宙。けれども、初めからそこに謎が存在したわけではない。人間が「謎」を次から次へと創りだすことで、「謎」があると信じているのだ。謎を誕生させたのは神でもなく、宇宙でもなく、人間自身なのである。



 例文AとB、どちらのほうが読み易いですか? かなり極端ではありますが、どちらの例も読点の位置としては間違っていないですよ(笑)
 Bのほうが読み易いと僕は思うのですが、Aのようにとまではいかなくとも、読点の多い小説を出している作家さん、いるからなぁ。読むときに意識的に読点を飛ばしながら読まないと辛いんですけど。
 また、こんな文章もやめましょう。


◆◆◆例文◆◆◆

 今日は下水処理場に見学に行くので、バスに乗って、下水処理場に着いて、係のおじさんが色々と説明してくれて、みんなと見学室とか実際に水を綺麗にしている所とか、おじさんの説明を聞きながらいろんな所を廻って、見学が終わったらおじさんから話を聞いて、またバスに乗って学校に戻ってきました。



 この例文は読点ばかりで句点がありません。読めますし内容も理解できますが、やめたほうがいいでしょう。


 文章は川の様なものなのです。そして読点は川の堰(せき)のようなもの。ところどころにあるのはいいけれど、たくさん置いてあっては川の流れはスムーズにならない。気持ちよく流れるためには堰がたくさんあってはならないのです。
 でもって、気持ちよく流れていることは美しく見えるのです。美しい文章は気持ちいい! そういう訳で、美しい文章になるように心がけましょう!

 と、くどくど言ってしまいましたが、簡単に言うと「口に出して読んだとき、違和感がなければオッケー」ぐらいの気持ちでいけばいいですよ(笑)



2.言葉の意味を考える



 文章が込み入ってくると、慣れない言葉、漢字を使うことにもなるでしょう。その場合はちゃんと間違ってないかどうかを国語辞典で調べましょう。
 日本はその豊かな自然と四季に育まれ、おかげで日本語には感情面などで実にこまやかで的確に表わせる言葉がたくさんあります。心理状態や気分を細かく描写することができますので、うまく考えて使いましょう。
 また、漢字には一つ一つに意味があり、発音が同じでも漢字は別という単語があります。これを“表意性”と言います。
 例えば「わかる」。漢字を当てると「解る」「判る」「分かる」があります。
 このような場合は漢字の意味を考えて使い分けましょう。

「解る」 物事が理解できたときに使う。
「判る」 AかBかはっきりと判別、区別するようなときに使う。
「分かる」 他人からの頼み事を了解したときに使う。


◆◆◆例文◆◆◆

♭例文A

(わかった兄弟・チェスをする)
「解ったよ! 兄ちゃん!」
「解ったか?」
「こっちがキング!」
「それクイーンだっつってんだろ!」
「なんで王様よりも女王様のほうがたくさん動けるんだよう!?」
「そんなの知らん!」


♭例文B

(わかった兄弟・家でのんびり)
「判った――!」
「なにが?」
「真犯人はお前だ――!!」
「……推理ゲームで叫ぶなよ……」
『真犯人はお前だ――!!(ゲームの声)』
「しかも叫ぶタイミングずれてるし……」


♭例文C

(これで最後、わかった兄弟・弟のお使い)
「悪い。ここに書いてあるものコンビニで買ってきて。あとで二百円やるから」
「分かったよ、兄ちゃん!」
(三〇分後)
「買ってきたよ! 兄ちゃん!」
「ああ、ありがと……ん? こ、これは!?」
「それ買うとき、なんだか変な目で見られた気がするんだけど」
「誰が避妊具を買ってこいっつったあぁぁぁぁ!?」
「あれ? 必要ないの?」
「必要あるか!」
「さびしーね」
「ぶっころす!!」
「ぎゃあああああああああああああはははははは!!(くすぐり地獄で悶絶しかけ)」



 他にも「せりふ」という言葉が、漢字違いで意味が違うというのがあります。
「科白」 特に決められていない普通の会話の言葉。
「台詞」 台本に書かれていることをなぞるような言葉。

 こういった語彙(ごい)を増やすためには、やはり本を読み、解らない言葉があったら辞書を引いて覚えるしかないでしょう。またはパソコンなどでひらがなを打ち、変換していって見つけだすという方法も取れます。実は、科白という漢字はパソコンで変換したときに気が付きました(笑)

 ちょっと脱線話。英語やフランス語は日本語に比べると心理を表わす言葉に乏しい。例えば、“もったいない”という言葉が英語にはない。“懐かしい”、“名残惜しい”、“さりげなく”などはとても訳しにくいそうだ。
 さらに付け加えると、フランス人には“悔しい”という感覚が解らないらしい。
「君と必ず結ばれると思っていた恋人が、土壇場で君の親友と結婚してしまったらどう思うか?」
「それが人生だと思います」

 日本語万歳! と言いたいところではあるが、心理関係などで言葉が多いのは基本的に日本人が悲観主義だかららしい。恥、悲しみを差し示す言葉は多いが、恋愛関係の言葉は少ないそうだ。フランス語、スペイン語には恋愛関係の言葉はかなり多くあるらしいのだが……。
(参考、と言うかほぼそのまんま:金田一春彦著、「日本語・新版」上巻)


3.接続語に注意せよ!



 しかし・だから・それで・つまり・または……

 これらのことを《接続語》と言います。文章を書く上ではかなり有名ですが、大学の入試試験で問題にされるぐらいに用途が細かく別れており、使うときには注意が必要です。
 また、一部の接続詞はとても使いやすいのですが、多用しすぎると文章が単調になりがちになります。読んでいて「またこの接続詞かよ」などと読者様に思われると辛いものがあるので、多用は避けるか、または単調にならないぐらいに色々な接続詞を勉強しましょう。



4.擬態語について



 「頭がくらくらする」、「腕が痛みでじんじんする」、「心臓がどきどき言っている」

 これらには“くらくら”、“じんじん”、“どきどき”と言う言葉が使われていますね。これを“擬態語”と言います。
 これに対する注意事項は特にありません。普通に使ってもらって結構です。ただ、知識として知っておいてください。
 なお、これに類するものとして「擬音語」と言う物があります。そちらについては「カテゴリー[そのさん] 7.擬音語について」を参照して下さい。



5.擬情語について



 あまり知られていませんが、擬情語というものが存在します。
「気分がムシャクシャする」、「ヤキモキして落ち着かない」、「なんだか、イライラしてるみたい」
 などのことです。これも使うに関しては問題ありません。知識として知っておきましょう。

※擬態語、擬情語の中には使っただけで幼稚っぽく感じられてしまうものもあります。用途、使いすぎに注意しましょう。



6.外来語はカタカナで書く



 「プロの作家が本を書く」、「フランス、パリのエッフェル塔」、「プログラムをランさせてクラッキングを仕掛ける」など。
 外来語は特殊な場合を除いてカタカナで書いてください。難しい語の場合は日本語で意味を書いておいたほうがいいかもしれません。

「プログラムをラン(実行)させてクラッキング(違法接続侵入)を仕掛ける」

 また、カタカナ言葉の多用は文章を書くことに慣れていない人がよくやるようです。素人だと思われたくない場合は、多用しないように心がけてはいかがでしょう?


【〜突発脱線ちょっといい話〜】

外来語を日本語に直す動きがある

 現在、日本ではカタカナ言葉が氾濫しているとの懸念があり、カタカナ言葉を日本語に直そうとする動きがあります。
 二〇〇二年の暮れ、国立国語研究所が外来語を高齢者にも解るような言葉に言い換える必要があると提言しました。カタカナ言葉のうちの六三語を漢字表記に直すらしいです。
 公表例では「デリバリー」が「配達、宅配」、「コンセンサス」が「合意」、「マスタープラン」が「基本計画」と言い換えられるらしいです。
 でも難しい語については賛否両論があるらしく、医療現場で使われる「インフォームド・コンセント」(十分な説明に基づく同意)を「納得診療」、社会の意見形成に影響を与える人を指す「オピニオンリーダー」を「世論先導者」、障害者や高齢者が活動しやすい状態を指す「バリアフリー」を「障壁除去」とする言い換えには異論も出るかも知れないとのことです。
 また、カタカナ言葉の方が解りやすい語もあって、例えば「ライフライン」は「生命線」と言い換えるけれど、かえって解りにくくなる場合もあるとして、「ライフライン(生活必需物資補給路)」などとカッコの中に説明を入れてカタカナ言葉を使うことも提案しているらしいです。

参考:ネット公開されていた〇二年十二月二六日の毎日新聞。  参照する場合はこちら



7.漢字で書かなくとも間違いじゃない?



 日本語には別に言葉をひらがなで書いてもいいという寛大な部分があり、無理に漢字を使わなくとも間違いではありません。
 けれども、漢字がないと言葉の意味が解りにくくなるので全く使わないというのもダメです。漢字ってすばらし〜!


【〜突発脱線ちょっといい話〜】

 その昔、第二次世界大戦終結後、アメリカからやってきたCIE(民間情報教育局)は日本人に物書きを全てローマ字でやらせようとした。
 偉いのは「何月何日からローマ字を使え」と言うのではなく、日本語のテストを行なった上で「お前らは読み書き能力が低いからローマ字を使え」という様にしたことだった。
 テストの結果、日本の文盲率はゼロに近かったと言う。これにCIEの役人さんは大変驚き、日本の教育体制に感心し、結局ローマ字のことはもう何も言わずにアメリカに引き上げて行ったという。
 もしも漢字がなくなり、全てローマ字で書くようになっていたとしたら、日本語はどうなっていたんだろう……。ちょっと想像するに怖いものがありますねぇ〜(笑)



8.他人に言葉を伝える



 文章を書く、という行為はつまり、自分の考えた事や言いたい事を他人に伝えることです(自分宛てに書いたとしても、一ヵ月前と今ではほぼ他人、と言うのはよく聞く話です)。他人に伝わらなければいくら書いても意味がありません。
 と言っても背筋を固くする必要はありません。不特定多数の他人と会話できるぐらいの力があれば、自分の考えを他人に伝える文章を書くことはできるはずです。もちろん、それが出来なくとも小説を書くことはできますけれど(笑)
 何はともかく、無闇に怖がらないこと! どーんとぶつかっていくぐらいの気合いを持てばいいんじゃないでしょうか(笑)



●さあ、前述の小難しいことをこなした人も省略した人も、まずは文章を書いてみましょう!
 そうですね、まずは今日の日記なんていかがですか? ともかく自分なりの文を書いてみます。書いてみることが大切です。書かないと自分の力を知ることなんてできません!
 たとえば、自分の書きたい事をうまく文章で表現できないとか、実は言葉の意味を間違って使っているとか。駆け出しの頃の人にはよくある話です。僕もそうでした(笑)
 もちろん、書いたその場では特に違和感はありません。これを二、三日寝かせてから改めて読んでみると! この結果は人によりけりです。

「特に異常なし!」  次章へゴー!
「ちょっと変かもしれない」  自分の変な書き方に気が付きましたね。それを確認した後に次章へゴー!
「かなり変だなぁ……」  さらに日記を書き続けて自分なりの文章の書き方を研究しましょう。研究することを決意した後に次章へゴー!
「何書いてんのか解らない……」  自分の文章の研究はもちろん、読書をして文章というものを研究しましょう。
「他人が書いたのかな?」  現実を認めましょう。小説を書きたいのならば、諦めないことをお勧めします。
「文章書くの、諦めます」  残念です。けれども、時間とは人を変えるもの。機会があったら、またもう一度興味が向いたならば、がんばって下さい。