ぼくらの思い出


エピローグ

「――と、いうのが僕が考えた物語だよ。題名、決まってないけど」
 一人の高校生が机の上に、演劇名の書かれていない台本を置く。
「ふ〜ん。よく考えるなあ。俺にはメンドクてそんなの創ることなんてできないよ」
「でも今出されてる他の劇よりは面白いんじゃないかな」
 他の二人の友達らしき高校生が手渡された台本を読みつつ答えた。
「じゃあさ、う〜ん、そうだな、あっそうだ、確か、誰かの台詞に僕らの思い出なんたら、っていうのがあっただろ。それを取って題名は【ぼくらの思い出】っていうのはどうだ? いい名前だろ?」
「そうだな……それでいくか」
 台本の表紙に、演劇名が書き込まれる。【ぼくらの思い出】、と。
「完成だ! きっとみんな感動するぞ〜」
「それはうぬぼれと言うもの。大体、何か最後らへん変じゃねぇか? 何と言うか、リズムがものすごくずれてる様な気がするぞ。『自分って何?』とか唐突過ぎだろ、いくらなんでも」
「……確かに、そうだな。まあそこのところは、みんなと話し合って決めるという方向で」
「なんだよ、まだ未完成なのかこれは?」
「ああ。でも、みんなで創ることができたらそれ以上のものはないよ」
「じゃあ、LHRのときにみんなに話せよ」
「ああ、オーケーオーケー。自信をもって話せるよ。これは僕らの劇、“ぼくらの思い出”だから!」

 こうしてまた、物語が始まる。彼らはこの先、いったい何を感じ、何を思うのだろう。
 たとえ今、それが未完成のものでも、骨組みしかないぼろぼろの役立たずでも、みんなで創り上げればそれは宝石のように輝くことだろう。そんなものを目指したい。たとえ、それが誰からも見えないものであったとしても、それはみんなの宝物となるだろう。
 それは、彼らだけが感じられること。観客には伝わらない、彼らの思い。
 願わくば、それが楽しきものでありますように。
 幕を降ろしたあとも、ずっと、いつまでも――


 完