41.「歩き続ける」
僕はひねくれた人間です。
だからこそ、喜ぶことがある。
僕は今日も歩き続ける。
とても長くて静かな回廊を、
僕は今日も歩き続ける。
時折流される短いメロディーが、
歩く僕の心を押してくれる。
歩くことが楽しいことだと
ゆっくり静かに教えてくれる。
僕は時々立ち止まる。
水の流れるモニュメントの傍で、
白い光を浴びている植物の前で、
誰もいない静かな回廊の中央で。
僕の目から、
思わず涙が流れそうになりました。
ここには、僕の好きな感動があったのです。
そしてまた、
僕は今日も歩き出す。
次なる世界を捜すために。
42.「知っている」
僕はひねくれた人間です。
だからこそ、見ただけでは解らない事がある。
ある日、僕は知らない場所へと行きました。
だけれども
そこに在ったのは、
ほとんどが知っている物ばかりでした。
一度も来た事のない場所にある
よく知っている物。
それは、人の造りし物なのです。
どこまで進んでも、
そこに在るのは人の造りし建築物。
まったく知らないという訳ではありません。
結局僕は、
人のいる場所にしか行けないのです。
だけれども、
僕はすぐに解りました。
ここで僕が知らないものとは、
ここにいる、人々なのだと。
43.「氷」
僕はひねくれた人間です。
だからこそ、思うことがある。
朝起きると、
玄関先の水の張ったバケツに、
とても厚い、氷ができていました。
昨日は氷なんかありませんでした。
一昨日も氷なんかありませんでした。
それなのに、
今日は見事な氷があったのです。
僕は空を見上げて、
流れる雲を見て、
流れる風を受け、
肌で季節を感じ取りました。
そして、僕は理解したのです。
夜の間にも、
季節は移り変わっていくのだ、と。
44.「社会の理」
僕はひねくれた人間です。
だからこそ、見定めることもある。
お金は、社会を大きく成長させました。
なぜならば、お金は処刑道具だからです。
お金は社会にとって優れた人の元に集まり、
お金は社会にとって劣った人から離れます。
お金が無ければ、
社会の中で生きていけなくなるのは
社会の理。
だからこそ、
人々は必死にお金を稼ごうとします。
そうするうちに、
お金を得ることが人々の生きる目的となってしまいます。
それが間違いだとは思いません。
だけれども、
少し寂しい気がします。
だからこそ、
僕は必死に考え続けます。
自分が生きる、その目的を。
45.「叱ることができない」
僕はひねくれた人間です。
だからこそ、困らせることがある。
僕は親を怒らせます。
なぜ、勉強しないのかと叱られます。
勉強をすればもっといい大学へと行けるのに。
勉強をすればもっといい就職先が見つかるだろうに。
僕は親を困らせます。
なぜ、物語を創り続けるのかと叱られます。
今、物語を創らなくてもいいだろうに。
今、そんな事をしている暇はないだろうに。
だけれども、
そんな親の姿を見て、
僕はじっと考え続けます。
もしも僕に子供ができたならば、
きっと僕は
自分の子供を叱ることができないでしょう。
なぜならば、
僕はずっと自分のしたいことをしていたのだから。
それならば、
僕は子供のために頑張らなければならないでしょう。
せめても、僕がしていた事を子供もできるように。
せめても、僕が子供と対等に話せるように。
僕は懸命に頑張らなければならない。
この先出会うかもしれない、
自分の子供のために。
46.「残虐だと言う」
僕はひねくれた人間です。
だからこそ、諦める事がある。
教科書を読んでも、
それは悲しみを教えてくれない。
参考書を読んでも、
それは喜びを教えてくれない。
人間に取って必要なものは、
泣いたり笑ったりすることなのに、
社会はそれを必要ないと切り捨てる。
社会が必要とするものは、
人々の持つ人間性ではなく、
紙の上の情報だけ。
しかしながら、
それは人間が求めた社会の姿。
残虐だと言う事はできても、
否定することはできないのです。
僕には
この社会を変えることはできません。
僕らはこの社会の中で踊り続ける。
人々の求める
社会の姿が変わる、その時まで。
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