01. 1 ―― [タイトル未定]
投稿者/
jojogaraba 更新日/2011/04/25 23:40:26
倒れこむ巨体。
狩人たちの猛攻に力尽きた雌火竜。
最後に一声上げ、その動きを完全に停止した。
「今日のレイアはなんだか機嫌が悪かったな」
雌火竜の体から鱗を剥ぎ取りながら、相棒が話しかけてきた。
「そうか?俺には分からなかったけど」
甲殻を剥ぎ取りながら答える。
「はは、お前必死だったからなー」
「生きるか死ぬか、だぞ。必死にもなるさ」
相棒は軽く笑いながら剥ぎ取りを続ける。
雌火竜からの剥ぎ取りを終え、そろそろ帰るか、という相棒の提案にうなずき、帰り支度を整え始めた。
そう、必死なんだ。
生きるか死ぬか、食うか食われるかの世界。
モンスターハンター。
強力な力を持つモンスターたちに対して、必死にならなければ無事でいられるはずがない。
一度の瞬きですら致命傷になりかねないのだから。
「今日は帰ったらご馳走だなー」
ホクホクした顔で相棒が言う。
彼の持つ荷物のなかには、飛竜種の尾が入っている。
相棒が言うには、これがまた美味いんだとか。
暖かい季節に食べる、挽いた尾の肉とホピ酒を使った炒飯がお勧めで、力が沸いてくるんだ、何て話を聞いていた。
「今はまだ春になったばっかりだぞ」
「まぁなー。この季節は…まあ、うちのアイルーたちがきっと美味い料理にしてくれるはずだ」
それから、話題は最近の食卓事情になった。
季節は春。
まだ雪の残るところも見られる、本当に春を迎えたばかりの世界。
新芽を求めてやってくる草食獣たちを狙う飛竜を狩るにはちょうどいい季節である。
ギルドに戻って報酬を受け取り、
「お、逆鱗が入ってる、ラッキー」
とか言う相棒の声を聞きつつまた今度な、と軽く挨拶をして家路につく。
草食獣の牽く車に揺られながら、今日の相棒の言葉を思い出していた。
(今日のレイアはなんだか機嫌が悪かったな)
俺にはそうは見えなかった。
相棒は何を見て、何を感じたのだろうか。
自分の命を奪わんとする狩人たちに対して、そもそも機嫌のいい動物なんているだろうか。
それでも、なぜか相棒の言葉が何時までも耳に残っていた。
気がつけば、辺りは夜になっていた。
車から降りて運賃を支払う。
家に帰れば後は寝るだけだ。
防具を脱いで、アイルーの作る飯を食べて。
次のクエストに備えて、ゆっくりと休養をとる。
以上のことを実行して、ベッドにぼふっと倒れこむ。
(…)
明日、今日斃した雌火竜の元へ行ってみようか。
その亡骸はギルドによって持ち帰られているはずだが、相棒の言葉がやけに気にかかる。
あの辺りに、何かがあったのかもしれない。
「明日、行ってみるか」
一人、暗い天井を見つめながら俺はそう呟いた。
そうして、瞼を閉じて。
ゆっくりと、眠りに就いた。
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