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世界群歩行者達情報区 [冥王]オンライン小説投稿サイト 自由夢幻会場
02. 2 ―― [タイトル未定]
投稿者/jojogaraba 更新日/2011/04/25 23:41:20
 夢。

 丘の頂上近くにある洞窟。
 天空に最も近いそこは、さながら玉座のようで。
 周辺一帯を一望できる場所。

 舞い降りる大きな影。
 天空の王者と呼ばれ、数々の生物の上に君臨する飛竜。
 その咆哮は大気を揺らし、翼が巻き起こす風は総てを吹き飛ばす。
 まさに玉座につくに相応しい姿をしていた。


 だが、この竜はどこか寂しげな、悲しげな姿をしているように見えた。


 ―瞬間、心が重なる。

 辛い。
 寂しい。
 憎い。

(…)

 目が覚めた。
 なんだかとても重々しい夢を見ていた気がする。
「…朝からなんともいえない気分だな」
 そうつぶやいてから、ゆっくりと身体を起こしていく。
 体の細胞を伸ばすような気持ちで大きく背伸びをし、ひとつあくびをかいてからベッドから降りた。
「さて…どうするかな」
 昨日思ったとおり、雌火竜を斃した場所へ行ってみるか。
 それとも、疲れを癒すため家でゆっくり休養するか。
「…」
 昨日の相棒の言葉をもう一度思い出す。
 というか、目が覚めても頭から離れない。
 やっぱり行ってみよう。
 採集依頼なら毎日需要もあるし、今から受注すれば日帰りできるはずだ。

 ピッケル、虫網、携帯式調理器具を持ち、軽めの装備をして支度を整える。
 雷を宿す片手剣、インドラを背負い支度は完了。
「どれ、行くか」
 アイルーから弁当を渡され、家の番と晩飯のメニューを伝えて俺は家を出た。



 俺がハンター稼業を始めてからもう4年目になる。
 若さに任せて多少無茶をするときもあった。
 今まで生きていられるのも、その若さのためであることが大きいだろう。
 今でも年齢は若い。
 ただ、街のギルドなどには行ったことがないが。
 近隣の依頼を専門に扱う、いうなれば村ギルドが俺の拠点だ。
 この辺りは比較的平穏な地域で、大型の竜が狩猟対象になるようなことは滅多にない。
 昨日は雌火竜狩猟依頼があったが、そんな依頼となると、それこそ半年に一度あるかないかである。
 で、その依頼を達成した報酬で向こう2ヶ月ほどは食べ物に困らないくらいの貯えはできているのだ。

「おう、兄ちゃん、今日も出勤かい?」
 村ギルドの受付のおじさんが話しかけてくる。
 平穏な地域であることもあり、この辺りでハンター稼業をしているものは多くない。
 常駐ハンターが一人、どこからともなく流れてくるハンターが半年周期で一人二人、俺と相棒。
 そのくらいだ。
 ハンターも少なく、さらに地元なこともあり、顔が覚えられているのだろう。
「ああ、昨日行ったあたりに採集にでも行こうかと思ってね」
「そうかいそうかい…えーと…ちょっと待っててくれよ」
 そういうとおじさんは手元に紙を何枚か並べていく。
「そういえばいつものお連れさんはどうしたんだい?」
 並べながらおじさんが聞いてくる。相棒のことだろう。
「ああ、あいつなら「今月はもう稼いだから休む」って行ってましたよ」
「そうかいそうかい…さて、どれにいくかね」
 目の前に並べられた依頼表を見ていく。どれも行き先は同じだが。
「じゃあ、これで」
 適当に真ん中を選ぶ。
「はいよ。んじゃ、ここにサインしとくれ。…よし、はんこ押してっと。そら、いってきな」
 慣れた手つきで依頼表を処理していく。
 このギルドは殆どこのおじさん一人で運営されているようだ。
 4年前からお世話になっているが、カウンターの向こうにおじさん以外の人がいるのを見たことがない。
「それじゃ」
 軽く挨拶をし、ギルド前の停留所で待機する。
 自分の足で歩いてもいいのだが、それだとアイルーに頼んだ夕飯を食べ損ねてしまう。
 ちなみに、貰った弁当は行きがかりの車の中で食べる予定だ。

 軽く所持品確認を済ませたころに、車が到着した。
 よっ、と車に乗り込み、腰を下ろす。
 今日の弁当はなんだろうか。
「パンにジャムか」
 どちらかといえば、朝食的なメニューだったがあまり大食いすると車酔いしたときに大変なので有難いといえば有難かった。
 目的地までは多少時間がかかる。
 特にやることはないのだが、目的地に着くまでの間なにをしていようか考えていた。
(暇だな…)
 緊張感がないことをやや心の片隅に感じつつ、かといって本当に暇だからさてどうしようか、といったところである。
(寝るか…)
 まぶたを閉じる。
 意識が半分以下になっていく。
 うつらうつらと、感覚を感じつつも自分の意思では動けない状態。

 言葉が聞こえてくるような、単なる幻聴か。
 映像が見える。様な気がする。
 火竜。
 一頭、丘の頂上で佇んでいる。
 そばには、碧色をした雌火竜の姿。
(どこかで見た様な…)
 ぱしゃぱしゃと水の音が聞こえる。
(水…?)
 半分以下になっていた意識が一気に戻ってくる。
「ん…」
 眠っている間にどうやらすぐ手前まで来ていたようだ。

 目的地に着く。
 丘。
 正確には、俺の目的地はもう少し奥に入ったところにある森なのだが。
「それでは私は戻ります。お帰りの際はこちらでお知らせください」
 ギルドの人から狼煙玉を受け取る。
「さて、まずは依頼を達成させてくるか」
 一先ず依頼を達成しておくべきだと思った。
 森に生えている茸数本を獲ってくるだけだからそれ自体に時間は余りかからない。


「…こんなもんか」
 依頼された本数より多めに茸を集め、依頼分を納品ボックスへ入れておく。
 茸の入ったかごに依頼書の写しを貼り付けておく。
「さて…」
 もう一度森に入らなければ。
 ここに着た本来の目的を達するために。

 森の中を歩いていく。
 その場所に近づくにつれ、前日の戦いの痕が目立つようになってくる。
(直撃したら間違いなく死んでるな…)
 自分の身体よりも太い木々が無残にも折れているのを見て素直にそう感じた。
 焦げたような匂いがしてくるのは雌火竜の炎弾によるものだろうな。


 その場所は、未だに雌火竜の流した血の跡が生々しく残っていた。
 亡骸は予想通りギルドによって回収されていたみたいだが。

(さて…)
 相棒が、雌火竜が機嫌が悪そうだと言っていた理由を考え始める。

 機嫌が悪くなるとしたらどのような理由が考えられるだろうか。
(突然襲われたからか)
 いや、野性で今まで生きてきた竜が襲われたくらいで機嫌が悪くなるだろうか。
 相手は自分の何分の一という大きさである。
(何かをしていたのか)
 食事中だった、あるいは散歩中だった。
 …どこか違う気もする。
(…)
 もう少し根本的な理由を考えなければならない気がする。
「そもそも、なぜリオレイアがこの森にいたのか、だな」
 口に出して言ってみる。
 なぜここに雌火竜がいたのか。
 昨日の依頼内容にも、普段あまり姿を見せない飛竜種が近くの丘に確認された、とあった。
 俺の知識が正しければ、普段の雌火竜はもっと温暖な、密林地帯にいることが多いはずだ。
 森、丘に来る理由。
 それはなんだろうか…


 ――ギャォォオオォゥ…


「!」
 近くではないがそれほど遠いわけでもない距離で聞こえる竜の咆哮。

 丘…

 雄火竜か?
 姿は見えない。
「…リオレウス…と」
 雌火竜。
 何かが分かった気がした。
 いや、少なくとも雌火竜がここにいた理由は分かった。
 生物としての行動。
 繁殖のために、あの雌火竜はこの森、いや丘に着ていたのだ。

 だからか。
 つながるように、相棒の感じた不機嫌さの理由も予測できる。
 繁殖のためにこの地に降り立ち、おそらくはつがいであっただろうあの雄火竜との子孫を残そうとしていた。
 あるいはすでに残しているのだろう。
 雌火竜の状態を見た限りでは、産卵前には見えなかった。

 そこへ敵意むき出しな俺たちがやってきた。
 不機嫌というよりは、むしろ本能のようなものだろうか。
(恐らく、としか言いようがないが多分そうなんだろうな…)
 自分なりに導き出した答えにそれなりの満足感を得ていた。


 ギャォォォオオゥゥ…


 その咆哮に一瞬背筋を固まらせる。
 さっきより近い。
 いや、それよりも。
「あのリオレウスは…」
 竜の間に恋慕の感情があるのかは分からない。
 ただ、自分の出した答えから思える理由は一つ。
 あの雄火竜は、雌火竜を探している。
 咆哮から、どことなくそんな感情が感じられる。
 気がした。

 …今すべきことは唯一つ。
 帰ることだ。
 あの火竜に気づかれることなく。
 狼煙玉には竜を避ける効果もある。
 あるが、今の状況で使うことは好ましくない。
 万一、ということもあり得るからだ。
(依頼は達成してある。後はベースキャンプまで戻れば…)
 ベースキャンプやギルドからの迎えが来る場所は大型竜が活動する場所ではない。
 そこまで無事に辿り着ければよい。

 森で注意すべきは、水場がもっともな場所だろう。
 なるべく水場を避けるように進んでいく。
 この辺りは何度も訪れている。
 地の利は心得ているつもりだ。

 …ォォゥ…

 咆哮が遠くに聞こえるようになってきた。
 ベースキャンプまでそれほど遠くはない。
(何とか無事に抜けられたようだな)
 今の軽装で襲われていたら確実に死んでいただろう。
 無事に戻れたこと。
 常に死の危険がある職業だが、それでも生きていることにどことなく安堵を感じた。

 ベースキャンプに到着し、狼煙玉を使ってからしばらくして、
「御疲れ様です」
 と挨拶しながら、朝とは違うギルドの人が迎えに来た。
 キャンプ内のベッドから身を起こし、帰り支度を始める。
 ギルドの人はそそくさと依頼の達成を確認し、品物を持って車へと向かう。
 俺もそれに続いてベースキャンプを離れた。



 日は傾き始めていた。
 ガタガタと車に揺られながら、俺は少し考え事をしていた。

 もしも、竜の間にそういった感情があるのなら、あの雄火竜はしばらくあの地に留まる可能性が高い。
 愛するものを失った悲しみは俺には分からないが、どれだけ辛いことなのか、寂しいことなのか。

 恐らく俺じゃない誰かがその存在に気づき、やがてギルドから狩猟依頼を受けたハンターが来るだろう。
 危険と判断されれば、の話だが。

 …

(考えても仕方がない、か)
 帰路はそれなりに長い。
 ベースキャンプ帰還時にすり減らした精神を少しでも回復しようと、寝る姿勢に入る。
 帰ったら、アイルーお手製のあったかい飯が待っている。
 今日は俺のリクエストした飯だ。
 うちで雇ってるアイルーはそこそこ腕もいい。
 きっとうまい飯が食えるだろう。
 そう考えることで、少しは気が楽になった。
00. 1
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