放送に耐えうるだろうか?

放送に耐えうるだろうか?
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 もう、暫くは蕎麦を見たくない。私はその一件から、トラウマのようになってしまった。しかし、今。サンドイッチ伯爵の像の前にいる。相変わらず、笊蕎麦食べ放題のお店には客が入っているようだ。
 近所にピザ屋が出来たという。しかも、開店当初からテレビの取材を受けるなど、評判も上々のようだ。今日はそこへ行こうというのだ。休日には1時間待ちが当たり前のこのお店も、平日の今日はすぐに入れた。
「いらっしゃいませ」。挨拶のできる店員を私は好きだ。
「一名様、15番テーブルにご案内いたします」。店員同士のコミュニケーションも取れているようだ。
 案内されたのはカウンター席である。このカウンター席は相席が出来るコーナーなのである。ここからだと、調理場が良く見える。
 しかし、何だ? この違和感は?
 調理場に立っているのはインド人である。まさかとは思うが、ナンを作っているのではないだろうか…。
 店員は全く、私の気持ちを理解していないのであろうか、疑問を抱いた時に「ご注文はいかがなされますか?」と聞いてきた。
 当然、店員は職務を全うしているのである。そして、落ち度も無い。
 モヤモヤ感を感じつつも、「メニュー表はどこにありますか?」と聞いてみた。いや、目の前にあった事を忘れていた。
「メニューはお客様の目の前でございます。もう少ししてからで、よろしいですか?」そう店員は告げて後にした。
 なるほど、当店のお薦めメニュー≠ェあるのか…。近くでは、アンチョビのパスタを食べているおばさんがいる。キャビアやトリュフ、フォアグラがトッピングされたものもある。それにしても迷う。価格がピンからキリまであるのだから…。
 しかし、わたしは一番始めに目に付いた当店のお薦めメニュー≠食べる事にする。価格が手頃なのも魅力的だ。
「すいません」。私は近くにいた店員を呼んだ。
 店員は「ご注文ですね?」。そう言った。
「当店のお薦めメニュー≠1つ」。
「当店のお薦めメニュー≠おひとつですね。それ以外にご注文は?」。
 私は手を振って、無い事を示した。
「分かりました。では、ご注文を繰り返させていただきます。当店のお薦めメニュー≠おひとつ、以上ですね。」
 そう言って、持ち場に戻っていった。

 暫くして、注文した当店のお薦めメニュー≠ェやってきた。なるほど、ドリンクまで付いて840円とは安い。早速、出来立てを食べてみる。熱くて、香ばしい香りだ。しかも、サラミの味も丁度いい。
 そして、紙コップに入ったドリンクを見た。コーラっぽい色で、気泡が出ている。きっと、コーラなのだろう。もしくは、ドクペ…?
 しかし、ジュースを飲んで分かった事がある。
 その後、ピザを平らげてから確認のためにもう一度、ジュースを飲んだ。
 やっぱり、そうだ。
 この味は、激甘コーヒーにジンジャーエールを加えた後味の悪い飲み物だ。
 しかし、私も大人だ。顔には出さない。

 会計を済ませると、忘れ物を取りに来た振りをしてインド人の作ったイカ墨ピザ(生地)の上に火薬を振りまいて、いつものカフェテリアへ足を進める。
 インド人は気付いていないはずだ。火薬の上にトッピングを施している事を。
 明日にはテレビで報道される事実を待ち望んで走り去った。

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