四月一八日、土曜日の話
半年に一度の全体会議。この会議内では前の半年の反省と次の半年への抱負を語らないといけないのであるが、これがどうにも嫌いです。心にもないことを言わなきゃならないので。 [◆]新種!?
半年に一回の全体会議。それは出向先に出ている人なども含めて全員が「ある程度」、現在の会社の状況を共有するための場である。ある程度、と言うのは結局のところ真実が語られているのか分からない部分があるからで、上だけで話し合われている部分が多々あるだろうからだ。
とりあえず、今回の会議で気を引いたのは、「前の半年の成績は収入と支出がトントンである。最終調整の結果次第では黒字になる」と言う部分で、完全に赤字だろうと思っていた僕にしてみれば驚きだ。まあ、社長もずいぶん走り回っていたし、実際の業績による収入が、と言うよりはいろいろなところからの融資とかがあってようやく黒字ってことだと思う。
前期の成績が赤字だと銀行からの融資がほとんどなくなってしまう。儲けがない企業には銀行が貸し渋るのである。そして、貸し渋られた企業は大抵、倒産する。そうなるだろうと予想していたのにギリギリ逃げ切られた格好となるか。流石だねぇ。
さて、会議は進んで前の半年の反省と次の半年の抱負については約せば「きつかったー」、「前の半年に手に入れた力を発揮できるようにがんばりますー」ということを語って適当に流した。ただ気になったのは、各人の語りのあと、大抵は社長から一言あったのだが、今回は社長は一言も語らずそれぞれの上司である部長が感想を言うという姿勢になっていたことで、おそらくは世代交代の一環なのだろう。社長がようやく黙ることにしたのかね。いいことだ。
んで、そのあとに昼食をはさんで催しと称して社内環境の改善の提案会議が行なわれた。主に気になることとして、「朝の朝礼は必要か」と言うのが一つ。もう一つあったはずだが内容を忘れてしまった。
朝の朝礼についてはやる意味があるのか、と言う根本的な疑問があるらしかった。確かに朝礼が無くても仕事は始められる。他の会社では朝礼に社訓をみんなで読み上げるなんていう動作を盛り込んでいるが、緒戦は空元気にしか見えない、などなど、いろいろ必要ないんじゃないかという思いがあるようだ。
というわけで、僕が「朝礼には仕事を始める区切りの役割があり、おはようございますと言い合うことで仕事始めのスタートダッシュが出来ます。そこに各人で一言何かを添えていただければ嬉しいです」と述べたらあっさり採用されてしまった。ただし、毎日交代して一人ずつ一言しゃべっていくと一週間内で同じ人が二回しゃべらないとならない場合もあり、毎週月曜日の朝礼の時にのみ、しゃべると言うことになった。しゃべる順番は今まで1部、2部と回っていたのを人の名前のあいうえお順でやることになった。あいうえお順に並べると一番槍は僕である。
社内環境改善会議が終わったら、次は新入社員たる社長の息子さんへの質疑応答が行なわれた。一人一人が息子さんに何でもいいから質問を行い、その後、息子さんからの質問に答えると言う形式で進められた。
「今まで一番お金を使った買い物は何か」。「大学ではなにを勉強していたか」。「社長の事はどう思っているか(親子なんだからこの質問は野次馬的に面白い質問だが、当の二人にしてみれば微妙だろうなぁ)」等、簡単でもなく難しすぎることもない質疑応答が行なわれた。
んで、僕の番である。少し悩んでこう質問した。
「僕のことってどう思います?」
自分のことがどう思われているか、おそらくは全ての人が気にする事柄である。ただし、こんな質問、真正面からぶつけてまともな答えが返ってくるはずがない。付き合いが長く気心が知れていたり中が悪かったり立場が対等であるならば比較的正直な心中を聞けるだろうが、それらがない状況では大抵は悪く言わないように配慮される。
そこから出てくる答えを必要とするのは答えた本人ではなく、質問した僕でもない。周りにいる人間である。答えを聞き、その答えの印象が僕に付与される。悪く言われる事はないから、いい印象のみがぼくに付与されると言う、実においしい状況だったりする。実に地道であるが、いざと言う時には役に立つだろう。
そういうわけで気になる答えであるが、こうだった。
「新種だなぁって」
予想GAYです。まあ、昔から変わり者、変人、規格外とは言われていたが、ついに新種まで行ってしまっていたとは。新しい照合獲得だぜ、イエイ!
詳しく聞くと「前の職場でも見たことないタイプですよね。朝来た時に誰も挨拶しない中で大きい声で挨拶するし、よく馬力が続くなぁって」と言われました。挨拶の時の様子しか材料にされていなかった気がするが、とにかく新種であると言う認識らしい。てか、挨拶をまともにしただけで新種扱いになるって、やはり挨拶ってめちゃくちゃ重要視されてるじゃないか、ほかの人はどんだけ挨拶しないんだよ。
逆質問は「今までの人生で楽しかった事は何か」ということで、大学生活での入学から友人獲得、勉強内容から自治会騒動等、かなりはしょって話をしました。僕は不満足ではあるが、そこそこ濃い生活だったと思う。大学生活は。部活騒動も語っとけばよかったかなぁ。
他に気になったのは顧問への質問の「東大に入るためにどんな勉強をしたのか」というもので、顧問は基本的に勉強が嫌いな人間だったけど、現役で入る事は無理で一浪して、予備校にも行ったけど面白くないから辞めて、自分で英語五時間、数学二時間、国語二時間、みたいに区切って一日十三時間ほど勉強していたそうな。しかし、二ヶ月その生活を繰り返していると途端に勉強する気がなくなってずっとテレビばかり見ている生活を一週間続けていた。一週間後、途端にテレビを見るのが嫌になってまた勉強をはじめ、二ヵ月後にまた勉が嫌になってテレビを見て一週間後にまた嫌になって、と言うのを繰り返したら東大に入れたとのことで。
このようなサイクルで勉強すれば誰しも東大に入れると言うわけではあるまい。顧問の人が勉強するに当たってこの方法が効果的だったと言うことだろう。自分に効果的な勉強法を見つけたわけだ。ただ、顧問の人の勉強サイクルは家族の人がそれを許していたと言うことも見逃せない。もしも一週間も勉強せずにテレビばかり見ていたら、大抵の親は怒鳴ることであろう。
質疑応答のあとは社内大掃除を行い、解散となった。
さて、時刻は午後四時である。微妙な時間だ。ちょっとふらっと街に出て家電でも見ようかなと思ったのであるが、結局そのまま家に帰った。明日はゆっくり休みたいものだね。 |
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