四月一六日、木曜日の話
新人歓迎会

 飲み会があれば普段は見えない裏側が見れる。そういうものらしい。

[◆]不良債権

 前に音信不通になっている顧客会社があると日記に書いたのだが、今日はその会社が本当に倒産したのかどうかを社長が調べまわっていた。どうやら、税務署に提出する書類において、その顧客会社から請求金を回収できるのかどうか、という点で立ち往生になっているらしい。回収可能か不可能か。その判断基準が欲しいらしい。

 僕は横で仕事をしていただけだが、社長の調べ方と言ったら実に微妙なものばかりだった。この手の調べ方については僕も分からないのだが、税務署に聞いたり銀行に聞いたりするのはいいとして説明が下手糞なのである。

 知りたいのは顧客会社が存続しているかどうか、である。ただそれだけのはずなのに一々「債権が回収できない」だの「見に行ったら看板が外されている」だの「電話は繋がるようだけど使われているのかわからない」だの、早口でどもりながら、しかも順序もぐちゃぐちゃで話すもんだから相手にちゃんと伝わっているのかどうかも分からない。横で聞いていて、あ、社長はもう駄目だわと実感した。

 そして、説明が悪かったのかどうか分からないが、税務署や銀行からは「個人情報保護法により、お答えできません」とか言われて立ち往生である。次に出てきたのが「電話は繋がっているのだから、その名義はどこになっているか」というまた微妙な探し方をするんだ。確かに名義が顧客会社になっていれば回収可能であると判断できるのかもしれない。実際、回収できるのかどうかはさておき。

 電話会社に電話して聞いてみるも、やっぱり個人情報保護の問題で答えを得られず立ち往生は変わらなかったわけだが、とりあえず、顧客からは債権は回収できそうにない。税務署の話では一応、回収不能で通すことが出来るようなので当初懸念していた問題はなくなったようなのであるが、まー、行方不明になった企業を探すのは難しいようで。

 さて。何時こちらが追いかけられる状態になるのかな。

[◆]新人歓迎会

 今日は新人歓迎会だった。この四月から入社した社長の息子さんの歓迎会である。歓迎会は出向先に出ている人が出向先のトラブルに追われて帰ってこれなかったことを除いて滞りなく進んだ。ビール以外の酒は飲まなかったが、そこそこ酔った感じ。テレビがなくなってもあまり苦痛に思わない人とテレビがなくなると苦痛な人とで活発な意見交換が行なわれているのは聞いていてそこそこ面白かったような気もするが、振り返れば単なる個人嗜好の問題でしかない話だった。建設性はない。

 一次会が終われば小数メンバーで二次会に行くことになり、僕は腕を引っ張られて付いていくことになった。大抵の場合、この二次会こそが真髄。上の人らの胸の内の不満などが聞ける絶好の機会だったりする。

 今回もそこそこ胸のうち、と言うか上層部の状況を聞くことが出来た。社長のワンマンさに粗が合ったのは昔からなのだが、去年に入った顧問の人がかなりの力を発揮しており、ずいぶん丸くなったそうな。ただ、顧問の言い分をやや無条件に受け入れているのではないか、と言う。まあそうなるのも仕方ないような気がする。実力や各方面への影響力は確実に顧問の人のほうが上だろうと思われる。腹黒さは感じないが、機嫌を損ねるとうちの会社の存続に関わりそうな気がする。社長にはがんばって顧問の機嫌を損ねさせていただきたい。

 で、この場にいない社員についてとかスポーツについてとかテレビとかゲームとか彼女が出来る出来ないだのとか盛り上がっているような森がっていないような、そんな空気の中で一時間半を過ごし、終電があるからってことで全員帰ったのである。

 さて、明日は二日酔いにならないことを祈ろう。酒の分解速度は速いので大丈夫だと思うけどね。