三月二四日、火曜日の話
夢と祖父のお葬式

 今日は祖父の葬式であるが、それとはほぼ関係のない夢を見た。女の人が死んだって言う夢だった。

[◆]寂しい夢

 僕には好きな人がいた。一緒にいれば心が安らいで、いろんなことをたくさん話していた。僕もたくさんのことを話したし、彼女もたくさんのことを話した。しかし、僕は熱っぽく実現できるかどうかもわからないことを語り、彼女は静かに実現できるかどうかも判らないことを語った。まるで太陽のようで月のようで、満ち潮のようで引き潮のようで。同じ場所にいるのに同じ場所にいない。向き合っているようで背を向けているようで。僕たちはまったく別の人間だった。

 ある日、僕は彼女から彼女の家の鍵を渡された。何かあれば駆けつけられるようにと。

 その日に彼女は死んだ。その知らせは誰かから伝えられたもので、それを聞いたとき、僕はただ自分の中に静けさがあるのを感じた。どこかで納得していた。彼女が死んだ――死ぬであろうことを。だから、僕は上着を手に取り、彼女の家の鍵を持って自分の家を出た。

 何が残っているのかを確かめるために。


 ――今日の夢は、やたらと寂しく、肌寒い夢だった。死んだとされる「彼女」は現実に存在する人間で、過去に僕と関わりのあった人間ではあるが人間性がどうのと言えるほど関わりを持ったわけではなかった。お互いにお互いのことを知らない、つまりはただ袖が触れ合っただけの人間で、今は生きているのか死んでいるのかもわからない。しっかし、実際に目の前にした人間が夢に出てくることは稀だ。ここのところ夢を見たという記憶もないけれども、この夢ははっきりと頭に焼き付いている。どんなところを歩いていたか。渡された鍵の形はどんなものだったか。死んだと聞いたときの心の動きや上着を手に取った感触。

 僕は何を求めているのか判らない。祖父が死んで、「誰かがいなくなった」ことに意識が集中しているからこんな夢を見たのかもしれない。

 もう少し続きを知りたかった。彼女の部屋には何が残されていたのかを。

[◆]祖父の告別式と納骨

 少々約束の時間に遅れて式場に着き、親族と挨拶したあとに遺影を後ろに親族一堂の写真を取った。その後、少し待機して式場の準備が整うのを待ち、告別式を始めた。親族以外の参列者は昨日よりも多く、人を呼びたくないからとあまり葬式の連絡をしなかったらしいのに用意された席は全て埋まってしまっていた。祖父は非常に顔の広い人間であったことは間違いないらしい。

 お経を読んでくれたお坊さんが去ったあとに告別式が終わり、献花式。これでもかと言う位に祖父の棺桶に花を詰め込んだ。こんなに花を詰め込んでも仕方なかろうに、とも思うのだが、そのあたりは人それぞれ。之で気持ちが少しは軽くなる人もいるだろう。献花が終われば棺桶の蓋を閉め、霊柩車に載せて火葬場へ。

 案内された火葬場は母方の祖父の遺体を燃やしたときと同じところだった。どうやら火力が他のところよりも強くて人気らしい。火葬場を前にまた焼香を上げて合掌し、棺桶は火葬室へと送り込まれた。一時間ほど待機。

 待機している間は携帯のワンセグでワールドベースボールクラシックの日本対韓国戦を手に汗握る思いでみんなで観戦。どうにも電波の入りが悪かったけれども、何とか状況を追いかけられる程度には見ることが出来た。トイレに行ったときにWBCの話をしていたら横から見知らぬ同じく火葬待機中のおじいちゃんに「今、日本勝ってるの?」と聞かれた。0−1で日本が勝っている状態で、現在は四回表日本の攻撃中。

 WBC中継を見たり喫茶店でサンドイッチを食べたりして過ごし、一時間後に納骨室へ。係りの人から人骨の説明を受けたあと、それぞれの部分の骨を骨壷に納骨していった。納骨も二回目である。太ももの骨とか部屋に飾るためにもらえたりしないかなぁと思ったが、まず間違いなく非難ごうごうになるだろう。

 納骨が終わればまた式場へと戻る。送迎は式場で手配されたタクシーに乗っていたのであるが、運転手さんがカーナビモニターにWBCの中継を移してくれて車内釘付けである(運転手さんは除く)。2−3で日本がリード、八回裏で韓国の攻撃。

 決着がつく前に式場に着き、納骨後の初七日供養と親族のお食事会。食事会をしている間にWBCは延長戦にもつれ込んで3−5で日本が優勝したようだ。あとで聞いた話では日本が勝った瞬間に2ちゃんねるのサーバが五台ほどパンクしてしまったらしい。普通は1000件の書き込みでストップされるスレッドが 1293 まで書き込まれたらしい。サーバの処理が追いつかなくなったことで書き込みが制限される前に293件もの書き込みが叩き込まれたということである。末恐ろしい。なお、日本を勝利に導いた最後の2点分をたたき出したのはイチローだったらしく、イチローは神認定された。イチロー最高!

 さてさて、祖父のお葬式、疲れたー。

[◆]冷やかしの進捗

 すでにチャット部屋単体での動作は完成しているので、あとは待合室の作成とチャット部屋を作成するためのプログラムがちゃんと動くかどうかである。もちろん削除も出来なくてはならない。その確認をしなければならないのだが、どうにも頭が働かない。祖父のお葬式の気疲れは相当のものだったようだ。また夢を見るために早めに寝たいというのもあるかもしれない。たまにはゆっくりと眠りをたんのしたいものだと思う。

 サイト全体の完成まであと少し。