二月一八日、水曜日の話
君が外された理由はね

 ついに解き明かされる僕がRの仕事を外された理由。

[◆]管理し切れません

 Rの仕事を外された理由がようやく正式に説明された。どうも、上司の仕事分量が大きすぎて部下二人の面倒を見きれなくなったためらしい。面倒を見れるのは面倒の掛からない一人だけ。ゆえに面倒が非常に掛かる僕のほうが外されたわけらしい。

 理由としては実に表面的なものである。どのような思惑があろうとも、出力される結果的な理由は全てそれに行き着くだろう。プログラムにミスが多いから面倒が掛かる、ちゃんと確認をしないから面倒が掛かる、作業に時間を取りすぎて面倒が掛かる、偉そうにしているから面倒が掛かる等、なんでもありだ。

 まあ、それが僕の気を悪くさせないための対策であろうともそういう説明がなされれば了解するしかないのだけれども。事を荒立てる必要もなく、現在の仕事であれば早くて七時には会社を出られるわけで。環境としては相当良くなったわけだし。

 上司からは「今のうちに自分のやりやすい仕事のスタイルを探しておいて」と言われたが、僕のやりやすい仕事のスタイルって言ったら上に誰もいない状態で仕事をすることが要素として入ってくる。会社で仕事すること自体、僕のスタイルに合ってない。

 仕事にまつわる苦労はまだまだ続きそうだ。

[◆]本当の理由

 さてさて、本命である。実に表面的だなと思ったのは外れではなかったらしい。午後になってから社長から呼ばれて実際の話を聞かされた。つまり、僕の作ったプログラムに問題がありすぎてお客さんからクレームが出ているらしい。非常に納得の理由だ。上司がなぜぼかしたのか、おそらくは人間的な感情からによる配慮なのだろうが、クレームが出されるようなプログラムしか作れない人間を仕事に参加させることは出来ないということらしい。

 クレームが出ることに関しては至極自然かなという気がする。つまり、それぐらい僕の持つ技術は修練されていない。プログラムを作ってきたけれども、ここ一ヶ月以内に作ったものでもない限り、どれも怪しいものばかりだったりする。そもそも仕様書が怪しいというのも含めれば一ヶ月以内のものであっても安心は出来ない。

 社長が言うには今回の仕事は入社三ヶ月程度の人間に任せられるべき仕事であるらしい。そんな仕事なら何十年も仕事している上司が苦労するはずはないと思うのだが、社長も言いたい放題である。とりあえず話の中から役に立つ情報を聞き取らねばならない。

 同じ話が三回ぐらい繰り返されたので把握するのは簡単だった。つまり、
・客からクレーム出たから仕事から外した。
・仕様の解釈の確認が必要。
・転職の勧め。
 の三つである。一つ目は既に説明したとして、二つ目については今回の仕事に限って難しい。仕様書自体が理解しがたい上に仕様もころころ変わる。社長自身、今回の仕事が遅れている理由の一つに仕様書の出来の悪さと仕様書を書いている会社の危機感のなさを挙げていたではないか。仕様の解釈については上司ともしているが、足りないといわれるとそこまでであり、下手をすると仕様の解釈のすり合せをしたことを上司が忘れてしまって、していないことにされたりする。まあ実際、僕も仕様書どおりに、と解釈のすり合せをしなかったことも多々あるのだが、仕様書の全ての文字列に対して解釈のすりあわせが必要であったということなのだろうか。

 さて真打は転職の勧めである。乱暴に要約すれば「クレーム出されるって事はこの仕事に向いていないってことだから転職したら?」ということ。実際にこの仕事は向いてないと思うので仕事を辞める事は個人的には喜ばしいのだが、単純にやめてしまうと生活の糧が存在しないことがネックになる。せめてチャットシステムで広告を出して一ヶ月に一万円でも稼がないと仕事を辞めた際には親から再就職でうるさく言われる羽目になる。それは避けたい。もとよりあまり企業に再就職する気がないというのに。ついでに今は就職氷河期だしね。運動代わりに説明会を歩き回るにしても交通費は結構掛かる。

 僕は叱られてそれに応える人間か。否。怒られている最中にチャットシステムや今晩の夕食について思うをめぐらせているような人間である。それを理解していて、直そうとしない人間でもある。

 僕が今の仕事を辞める時期は近い。急がなければ。

[◆]冷やかしの話

 昨日、妹から冷やかしの背景に使える画像を受け取ったので組み込んでみたが、その時にデザイン上の問題が発見された。スタイルシートの外部ファイルの問題であった。スタイルシートを外部ファイルにすると複数のページで共通して使えるものの、一回読み込まれると以後しばらくの間は新しいものと交換されなくなる。つまり、一回閲覧されたページのスタイルシート外部ファイルを更新したとしても、すぐには見ために反映しないのである。

 閲覧者のパソコンに保存されるファイルのことをキャッシュという。一回読み込まれたページに対しては以降このキャッシュを使うことで表示の高速化を計っている。ただ、よっぽど重いファイルでもない限りネットワーク環境が発達した昨今ではあまり気にならないかもしれない。

 そんなわけで、外部ファイルの内容を直接 HTML に出力することで常に最新の外見を保てるようにした。いろいろ、手間隙(てまひま)掛かるもんだ。


 さて、本日は冷やかしのテストチャットルームに入り浸ったままゲームなどをして、テストチャットに遊びに来てくれた人と挨拶したり会話したりしていたのであるが、夜の午前二時ごろに一人と込み入った話をした。

 チャット上でしか意思疎通をしたことがないその人の事は、本人がチャットで発言し、ブログに書いてくれていること以上の事は知らない。どこに住んでいるのかどんな顔をしているのか、そもそも男なのか女なのかも知らない。話を聞くに男だと思うのだけれども、確証はどこまで行っても得られることはない。それがネットである。

 だから、その人の事は八割がたが想像で埋められている。どういう状況でどんな気持ちでチャットに発言を続けているのか、正確には分からない。発言されたことに対して返事をするが、その返事の内容が的を得ているかどうか分からないのである。誤解だらけになりやすい環境だなと思うばかりだ。

 しかし、それであっても、僕は冷やかしを作っておいてよかったと思う。類似品なんてあふれかえっているけれども、今この時、これがあったからこそ人生の欠片をまた一つ手に入れることが出来たと思った。

 冷やかしの製作は遅れている。でも、間に合った。それを誇りに思う。

 君の進む先に、君の幸せがあることを祈ります。


 さて、もう午前三時なんだけど睡眠時間四時間で明日まともに仕事できるかなー。仕事量そのものは強烈に減ったのに、家にたどり着く時刻もかなり早まっているのに睡眠時間も強烈に減ってるじゃないかここ最近。

 どうやら僕は人生をそこそこ楽しんでいるらしいのだった、まる