十二月一七日、水曜日の話
寒い日の月夜に笑う

 笑え笑え、もう笑うしかないんだから、笑え。

[◆]まだまだ健康なようで

 ここのところ、終電間際もしくは終電で帰るのが常態化している。「次の電車がどこそこ行き最終です。お乗り遅れのないよううんぬん」というのはもはや何回も聞いている放送であり、つまりはもう地元の駅まで帰る電車がないという証でもある。会社側の駅でこの放送を聴いたときには、既に地元の駅まで走る電車は無く、途中の駅で全て止まってしまう。さもありなん。JRに途中で乗り換えればなんとかさらに地元に近づくことが出来るものの、家に帰るには三〇分から四〇分歩く必要がある。あれだよ、自衛隊の裏に出来た新しいJR駅だよ。

 さて、今日は特に会社に遅くまで残ってしまい、洗い桶に出されたコップを洗うのもそこそこに会社を飛び出して駅まで走って終電に乗り、次はJRに乗り換えてさらに戻る、と言うことになったわけだ。なんかもー愚痴りたくなって最近はあまり顔を出してないけど割りと人がいるハルヒのジャズ雑談らじおの掲示板に書き込みをしていたのである。親にも連絡して地元に近いJR駅まで車で迎えに来てもらうよう頼んだ。

 あとはJRに乗って帰るだけ。そのはずだった。

 疲れてバグった頭ではまともに帰ることも出来なくなるらしい。JRに乗ったはいいものの、次の駅に止まった時、まだ見慣れていない駅の案内板を見て、自分が地元とは逆方向の電車に乗ってしまっていると思った。あわてて降りて……その電車が最終で、もう前にも後ろにも戻れない状態で、しかもちゃんと地元のほうに向かっている電車だったと気がついたときには、駅の電光案内板には「本日は終了しました」の文字。財布の中にはお札系は一枚も無く、タクシーにも乗れない。

 結果として親に遠出してもらうことになったわけだが、その駅ってのが周りになーんにも無い駅だった。非常に整備されていて綺麗ではあるが、何も無い。月が綺麗な夜だった。一人で笑っても誰もいない。この寒い夜の中、身体を壊しそうな気もしたが壊れることはなさそうだ。まだまだ元気。体壊したら休めるだろうけれども、まだ元気。

 ひとまず親が来るのを待つことにして客を狙うタクシーの目を受けつつ(と言っても、最初はタクシーなんか一台もいなかった。待ってたら走ってきてしばらく止まっていた)掲示板に書き込みをして反応を貰って暇を潰していた。もう時刻は午前一時を回り風呂に入る事は絶望的だ。もう五日も入ってないんだぜ。IT企業は5Kと言われているが体得するとはね。「キツい、汚い、帰れない、キリがない、気が休まらない」らしい。一定の能力が得られるまでは試行錯誤の連打だし、風呂入りたいけど気力なく飯を食べて寝るのが限界、帰れないってかもう本音は帰っても仕方ないって状態だし、なんかもう社長は受注を取るのに必至だし(形はないが物を作るって仕事なんで、キリが無いのはそうだろう。ただ、使われ出したら四六時中責任を負う必要があるので一つ仕事を請けたら下手すると退職するまで解放されない。ちなみに、退職しても解放されて無い人がごく身近にいるのだが……)、トイレの中でしゃがみこんで休むのが日課だよ。社内じゃ二、三分手が止まっているだけで文句言われたぜ。

 で、三〇分ほど棒立ちして何とか迎えに来てもらい、帰路についた。親には散々頭を下げなければならなかった。もう親に愚痴をこぼせないじゃないか、どうすりゃいいんだ。

 家に帰ったら飯を食べ、ハルヒのジャズ雑談らじお掲示板に報告し、睡眠をとるために布団にもぐりこんだ。時刻は既に午前三時前。四時間しか眠れない。

 明日こそは風呂に入りたいものだ。