十二月一〇日、水曜日の話
昨日は気力的にやばかった

 家に帰ったら風呂に入ろうと思ってたのに、風呂には入れず。飯食べたらすぐに就寝。

[◆]飯の食べ方を忘れる

 昨日は本気でやばかった。家に帰ってから、飯を食べようとしても目の前の玉子丼の食べ方がすぐに思い出せなかった。お箸を手に持っているのに。何か打ちの母親が僕に尋ねていた気がするが、よく思い出せない。ただ、妹が「大人なんだから自己管理ぐらい出来るでしょ」と言っていたのは覚えている。今となっては、それって建前でしかないんだなって思う。実際、疲れてしまうと自己管理どころの話ではなくなってしまうようで。気力を確保できん。

 朝になってから考えたのだが、やっぱ一日の労働時間が長すぎる。つまりは、仕事量が多すぎる。ということは、人が足りなさ過ぎる。なぜ人が足りないのかって言ったら、人をやめさせる割には新しい人が来ないからで。横に人が欲しくてたまらない。部下はいらないから横で同じ仕事をしてくれる人をくれ。現在の社内労働力の許容範囲ギリギリのところまで来てるんじゃねーか。つまり、社長の経営ミスじゃねーか。人を増やすか仕事を減らすかしろよ。日本人だから我慢してくれるレベルだ。これが外資系だったら速攻でストライキ起きているよ。不況で儲けが無い? てめーの給料を半分にしたら五人は雇えるんじゃねーの? どの道、自分の給料は下げないんだろうけどな! 自分の利益は護るんだろうが。

 多大な仕事量の前に社員が倒れるか、全員の給料を下げてでも人を増やすか仕事を減らすか。ちなみに仕事を減らす考えはないらしい。また新しく仕事の依頼が来てそれを受ける気満々だ。目の前に出された金額しか相手にしてないんじゃないか(ここで言う金額とは、紙に書かれた数字であって現金のことではない)。自分のところの足元を見ろや、オタク顔負けに幻想追いかけてんじゃないよ。二次元に嫁を求めて実際には結婚できないかのごとく、保持労働力にぶら下げられた金額を求めて倒れるのかよ。

 すでに労働限界は抜き差しならないところまで来ている。僕のこの状態ですらまだましなほう。僕はまだ力量が足りないと見なされていて難しい仕事は回されないが、仕事を回される人はたまった物じゃない。すでに「死んでくれ」と言われている人がいる。僕の一つ上の立場の先輩ね。実年齢は僕より年下なんだけど。

 頭痛いね。

[◆]昨日に引き続き社会の労働状況について

 上の世代が下の世代を食い物にしている。これが解消されるだろうと目論まれたのが団塊世代の定年退職だったわけだが、本当にこれで状況が改善するかというと改善しない。ただ単に上のつっかえがなくなって階段を上れずやきもきしていた世代が上がるだけで、そいつらを下の世代が支えないといけない状況は変わらない。さらには定年退職するのは所詮、単純労働者であって経営陣ではない。上の上は依然として居座り続けることになる。やはり、下の世代は食い物にされる。一歩進んでやはり頭を押さえつけられるのである。若い世代は新規採用の締め付けも加えて人が少なく、一〇年前の同年齢の労働者達よりも三倍から四倍は働かされることになる。経験も足りないので能率は上がらず、実質労働負荷は九倍から十倍。今は定期昇給もないところが多く、下手すると年二回の賞与も無い。昔の人が二二歳から六五歳までの四三年間働いていたとしたら、昇給や賞与の分もかんがみて三年働いて仕事を辞める人が出てくるのはとても自然なことなのではないだろうか。昔と比べて条件がひどすぎてモチベーションを保つ事は至難だ。

 昔は良かったと懐かしむ人が出るのは仕方ない。昔はなぁと昔を比較対象に出されてもどうしようもない。年長者が自身の利益を護ろうとする限り、もはや発展はない。さっさと滅べ旧世代。

 で。

 この状況を考えると、年長者は利益を持ち続けていることになる。その昔に会社において上位の立場を手に入れた者は今も変わらず利益を得続けているわけだから、金はある。ならば、年長者の金を使って生きるのはある意味では自然の流れといえるかもしれない。つまり、ニートになれる人がニートになる事は実に自然であると思われる。働いてきた人から見れば単なる怠慢だが、今は真面目に働いても親世代と同じ収入を得ることはできない。年長者がかっぱらっていくせいで。ならば、そのかっぱらっていっている年長者の金を使って生きたほうが生きる手段としては理にかなっている。使えるか使えないかが、ニートになれる者となれない者の境界線だ。ニートになったものは勝ち組だよ、生きるという点においては。労働する理由って言ったら生きるためであることが大半だから、大半の人間に対してニートは勝ち組なのである。親が死ぬ頃には他の年長者も死に始めており、働くには申し分ない収入が得られることだろう。

 損をするのは今、真面目に働いて利益をかっぱらわれている若者だけだ。見返りも無く働くことを承諾した人間だけだ。

 つまり、今、他人の会社で働いている僕は阿呆なのである。既にうちの会社の利益は上の人にかっぱらわれていて、僕にまともに支払われることはない。上の人がこう聞けば「俺らだって昇給も賞与も無い」って逆切れするだろうが、僕と同じ給与で無ければ説得力はない。効率は向こうのほうが上だろう。だったら、僕がやるべき仕事はないってことなので仕事辞めようかね。

 ここで働いているのがアホらしくなって来た。早く自分の製作物を仕上てしまおう。遊んでいる場合じゃないや。

 ちなみに。物の本によればこういうのに気がつくのって三十代後半の人が大半らしいよ。なんで入社一年半の僕が気がつくんだよ、せめて三年だろう。それだけ、社会全体が衰退しているってことなんだろうね。どこもかしこも。