十一月一七日、月曜日の話
ねずみとの闘い

 子(ねずみ)の年男が年の終わりも間近なこの時期、子との闘いに身を投じることとなった。

[◆]鼠を捕獲

 日曜日の夜の話である。日曜日、何か糸が切れてしまってさっさと床についた。明日は平日、仕事があるし、やる気が出ないなら寝るに限る。

 さて、布団にもぐりこんでからしばらくして。しばらく静かだった部屋にカリカリと固めのプラスチックの包装紙がこすれる小さい音が聞こえ始めた。耳を澄ますに、どうやら昨日買ってきたうまい棒サラミ味二〇本包みかららしい。

 さてはてと電気をつけて確認してみた。めがねを洗面台のところに忘れてきてしまったので良く見えないが、ぱっと見て何か問題があるわけじゃなさそうである。パソコンのサーバの風でも当たってたかなと思い、ちょっと位置をずらしてまた眠りに付いた。

 で、またカリカリという音に目が覚めたわけである。流石におかしいと思って電気をつけてしっかり調べてみると、うまい棒の一本が、食い破られていた。中身も三分の一ほどなくなっている。包みを食い破っているその穴の大きさからゴキブリである可能性は即座に捨て去られた。候補に挙がったのは、である。

 実はここ数日、家の中で鼠の目撃情報が相次いでいる。僕も昨日、夕食時に机の下を走り抜ける鼠を目撃した。ちなみに我が家の犬はノータッチらしい。鼠の大きさは握りこぶしもない。体毛はやや茶色がかっている。今まで目撃情報は一階だけだったが……どうやら、鼠の勢力は二階の、しかも僕の部屋にまで伸びているらしい。……僕の安眠を妨害するとはいい度胸だ。人がせっかく珍しくも零時前に寝たというのに。

 と、いうわけで部屋の中にあるもので簡易のネズミ捕りを作った。材料は空っぽのプラスチックCDラック(正面部に板のないプラスチックの箱)、鉄板(本来の目的はカバンのに仕込んだ防御板)、重り代わりの水の入ったペットボトル(観葉植物用)である。プラスチック箱の娼婦面部を上に向けて中にかじられたうまい棒と包装が完全なうまい棒の二本を入れておき、その上に板を載せてペットボトルを乗せる。鼠が入れる程度の隙間を開けておいて完成。

 というわけで、準警戒態勢でまた布団にもぐりこんだ。しばらく放置である。

 三時ごろ、物音に気がついて蓋を閉じて確認。気のせいだったらしい。

 四時ごろ、新聞配達のバイクがやってくる。今のところ罠にはかかっていないようだ。

 五時ごろ、カリカリと音が罠から聞こえてきた。蓋を閉じて……中に何かいることを確認。あとはほっといて七時ごろまで寝ることに。おー、カリカリやってるわー。

 六時半頃、脱出せんと箱を引っ掻き回したりかじったりしている音がうるさくなったので起きて箱を確認。半透明のプラスチックの向こうに鼠の姿を確認した。うーむ、本当に鼠が来ておるとはな……。

 で、この罠はあくまで簡易のものなのでもう少し様子を見るためには別の入れ物に入れ替えたいところだ。移送方法であるが、手で捕まえる事は不可能と思っていいだろう。やるならばこの罠ごと袋に入れて一旦袋の中に鼠を隔離し、そこから改めて用意した別の容器に移し替えると。

 先に言えば、ここで逃げられた。ちゃんとした袋を用意しなくて少し小さい袋でいいやと思ったのが間違い。罠を半分程度突っ込んだ状態で何とかなると思ったら、振り落とした瞬間に袋の脇を駆け上り、速攻で脱出しやがった。鼠は棚の下の隙間へと駆け込み、その先にあるガス管の隙間から部屋の外へと脱出した。脱出ルートをしっかり把握していたことになるだろう。鼠は簡単な迷路ならば道筋を覚えてしまうぐらいに頭がいい。

 とりあえず、今回は負けたが、実際買ったとき、鼠の処理はどうしよう。殺しておくのが今後への影響を考えると一番良いのだが、家族で考えることとしよう。とりあえず報告のみ。

 次の罠はもう少し本格的なものにしよう。構造は既に頭には浮かんでいるのだが、問題はそれぞれの材料をちゃんと固定できるかどうかだなぁ。材料、トイレットペーパーの芯がいいかやっぱジュースの缶にした方がいいか……。

[◆]日ごろからやれ

 本日の朝の仕事は金曜日に一日掛かっていたプログラムを完成させることである。金曜日に一日かかっていた分、ほとんど完成に近い。あとはちょいちょいと別ソフトを噛ませつつ編集するだけで。

 そして、悲劇はその時に起きた。

 完成間近のプログラムのソース、取り間違えて別のプログラムのソースで全部上書きしちゃった♪ バックアップもナッシング♪

 やっちまったあああああああああ!

 金曜日の仕事が全てふっとんだ! 提出は今日の午後までだからあと二時間半。プログラムは白紙である。普通に考えるともう一日掛かることになるが……。

 冷静に。騒いでも何にもならない。幸い、上司の一人は会議中。一人は十一時出勤。報告する相手がいないことを理由にやるしかない。

 とにかく、完成形は既にわかっている。そこに合わせて最速で組み立てるしかない。

 十時一五分頃に十一時に来る予定だった上司が到着してしまったが、無視して平然と仕事をしているかのようにキーボードを叩き続けた。

 結果として、昼を三〇分位過ぎたところで「完成しました」と提出した。一日かかった仕事を三時間で終わらせたことになる。つまり、本気を出せば一日かかる仕事も三時間程度で終わらすことが出来るわけだ。


 という認識は誤りである。


 日ごろからこれぐらいの勢いでやれよ、というのが正解だ。三時間で終わるような仕事をなんで一日以上掛かってんだよ。答えはサボっているからですが。

 やれやれ、うちの会社の主戦力の人も今週末で退職してしまうし、ボロボロもいいところだな。早くに新人を入れてくれよー。でないと持たないぞ。本当に。

[◆]パートさんがなかなか帰ってくれない

 午後七時半を過ぎて既に社内には二人しかいない。僕とパートさんである。僕よりもそうとう難しい仕事を任されているようなのであるが、それはそうとして一向に終わる気配がないです。くっ、家に帰ってチャットシステム作りたいのに、これではもう寝るしか時間が無くなってしまうではないか。僕の仕事もまだあるにはあるものの、仕事用の気力なんかもうない。お腹減ったなー。

 そういうわけで、うちの会社についていろいろ考えてみよう。

 うちの会社は小企業である。中企業ですらない。一応、主力となる商品はあるものの、売上には伸び悩んでいる。特許を取ろうとしたりとかしているのだが、あんまりうまく行っている気配はない。どころか、むしろ悪い方向に転がり落ちているといえる。主力である幹部が会社を去ることになり、残っているのは技術力があるもののあまり人付き合いがいいとは言えない人ばかりだ。しばらくは取引先から愛想をつかされることはないと思うのだが、厳しい気がする。景気が悪いこともあり、取引先がこちらの請求金を削ったりするかもしれない。むしろ取引停止もありうる。

 IT企業は頭を使う仕事である。頭しか取り得がないとも言える。ゆえに、体力がない。打たれ弱いのが悪いところだ、簡単にねじ伏せられる。請求できる金額はどんどん減るばかりか。最終的には別の業界で稼いでいるところがついでで作ったソフト等が売れる時代になるだろう。メインでソフトを作っているところは滅びそうだ。体力なさすぎで。

 悪い方向に転がるのは必至。さて、あとはどのように転がるかであるが……。続けられる、辞めさせられる、以前に逃げ出したほうが懸命になるかもしれない。やってられない。はー、やれやれ。