五月一八日、日曜日の話
イチノイカズイ殿と大阪城

 本日はイチノイカズイ殿と遊びます。

[◆]大阪城の大道芸

 本日はイチノイカズイ殿と遊びます。割かし急な決行となったわけですが、八割がおしゃべりに費やされる予定なので特にこれといった予定も立てなくて済みました。いやぁ、今回、遊ぶことになったのは僕がイチノイカズイ殿に対して非常に暗鬱なメールを送ったからでして、「自殺するやつの気持ちが分かってきた。淘汰に負けただけなんだけれどさ」とか「疲れた頭では時間が拾えなくて泣きそうだ」とか「僕って馬鹿なんだな」とか、どうやらイチノイカズイ殿に気を使わせる結果となってしまったようです。申し訳ない。しかし、今回しゃべる機会を得たのはこれ以上ないほどの幸せです。ありがとう、イチノイカズイ殿。

 今回はなんとなく半そでの白のカッターシャツに黒の細めのネクタイに金色のネクタイピンを斜めに引っ掛け、その上に黒の半そでジャケットを着てめかしこみました。ある意味、人生で初のおしゃれかもしれない。初なせいで本当におしゃれなのかわからん。鏡で見た感じはそんなに違和感ないからいいだろう。めかしこんだせいで二〇分ほど遅刻してしまったけれど。今後の参考にしよう。

 んで、いつもの場所で落ち合い、時間もまだ十一時半でおなかも減っておらず、近くを散歩しながらしゃべることにしました。涼しそうだから、ということで川のほうへと行き、川の沿岸の公園を歩きながら最近の話とかをお互いに喋り捲りました。仕事の状況や愚痴や精神状況など。最近はお互いになかなか会えず、本当に語り合えなかった時間を取り戻すかのごとくしゃべってその場の空気を楽しみました。

 そして、足を進めて大阪城の近くまで来たので大阪城に行くことに。大阪城を「わが別荘」と言って憚らないイチノイカズイ殿はまれに見る逸材です。やはり。

 大阪城はまずねその周りがすべて公園化されていて非常に広い。ボール遊びをしている人のほか、演歌をスピーカーから流している人とか大道芸をしている人とかいてにぎやかです。で、その中でも僕らがちょうどその場所に来たときにちょうどマジックを始める大道芸人さんがいて、思わず二人して見入ってしまい、いつの間にか最前列にいたりして、風船が鉄のステッキに変わるのに驚き、真っ白のページしかなかったはずのスケッチブックが次の瞬間には絵がたくさん描かれたページばかりになり、次には絵に色がついていたとか驚きばかりでした。あまりにも鮮やか。何も入っていなかったはずの紙袋から箱が三つも出てきました。鉄の輪の連結やはずしたりって言うのはポピュラーなマジックですが、聞くのと見るのとでは大違い。ぜんぜん分からない。あまりにも自然すぎてどうしてそうなるのかが分からない。そして、それが面白い。あまりにも面白い。

 最後はお客さんを使ったマジックなども疲労され、拍手喝采のうちにマジックが終わりました。最後に挨拶があり、この道一三年、これだけで生活をしております。なにとぞ形ある分かりやすいもので気持ちをお示しくださいと申されるわけです。納得、千円は硬い。そして、この日、このマジシャンは運がよかった。僕の財布の中には五千円札と一万円札しかなく。つまり、五千円札をぽいっと差し出された帽子の中に入れてきました。それだけの価値はあるだろう。

 次に大阪城へと入りました。エレベーターと階段とがあるようで、僕たち二人は協議もせずに階段へ。エレベーターはなんか人がたくさん並んでました。それはいいけど、お城の中にエレベーターって。聞けば、大阪城は外見こそ古風な日本の城ですが、中身は完全に作り変えられており博物館になっているようで。中は完全に近代の建物でした。

 とにかく最上階。天守閣。そこから見える景色は絶景、とは行かず。残念なことに城よりも背の高いビルがたくさんあります。昔、この城にいた人たちがこの光景を見たらさぞかしがっかりするだろうなと思います。まあ、その分、その昔は町を見下ろせるほどにいい眺めだったんだろうと思います。天守閣展望台を一周して、階を下りながら各展示物を見ていきました。まあ中身はぜんぜん見ていなかったりします。

 大阪城を出て、僕たちはある方角に向けて歩み続けました。実は天守閣にいたときに、近くの大きな広場で人がたくさん集まっているのが見えまして、そこに行ってみようと相成ったのです。しゃべりながら歩いていき、狙撃銃の弾道に対する風の影響などについてしゃべりながら外堀を迂回して広場へ。どうやら、バザーをしていたらしい。僕らが行ったときにはすでに終わりかけの気配であり、特に広場に入ることもなく、近くの縁石に腰掛けてそこでもいろんなことをしゃべりました。

 しばらくして、日本橋に行こうということになって広場を抜けてJR環状線の駅へ。途中、音楽イベントが広い通りで催されており、ギターをかき鳴らし太鼓を打ちまくるすごい音量をそこそこ楽しみながら、日本橋へ。

 日本橋では特に買うものもなく、むしろ買いたかったサウンドカードが僕が買いたかった一ヶ月前にはなかったのに、僕がサウンドカードを発注して買った二週間後には店頭に並んでいてやや微妙。僕は先取りしすぎたか。まあ、値段は千円しか違わなかったけど。同人ショップにも行きました。何か音楽CDでも買おうかなと思いましたが、肝心の音楽CDの中身がどんなものか分からない。同人音楽は作者特性がもろに出てるからあたりはずれが大きいし、中身も知らずに聞くことはできない。初音ミクのCDもずいぶん出るようになったなぁ。やたらと恋愛を前面に押し出しているのが微妙っちゃー微妙。

 結局何もかわずに日本橋を去り、駅までまたイチノイカズイ殿といろんなことをしゃべり、駅で別れました。

 いろんなことをしゃべりました。それは一週間もすれば忘れてしまうような他愛無いものが大半で、楽になった気持ちもまた疲れ行くことでしょう。それであっても、僕はイチノイカズイ殿に感謝したいし、彼と話せることを誇りに思う。


 ありがとう。