九月 四日、火曜日の話 [◆]ツンデレとは
最近では「ツンデレ」というキャラクター属性が人気である。このツンデレと言うのはキャラクター属性の歴史としてはそんなに長いほうではなく、まだまだ新しい方だと言うことができるだろう。と、言うのもツンデレという言葉が発明されたのはつい最近のことだからである。キャラクター属性と言えば「優しい」、「お淑やか」、「気品」、「気丈」(性格属性)、「女子高生」、「大学生」(肉体年齢属性)、「メイド」、「ナース」、「警官」や(職業属性)、「姉」、「妹」、「幼馴染」、「いいなずけ」(人間関係属性)、その他は「猫耳」(付加価値属性)とかが有名である。細かく分類すればもっと出てくるだろうがひとまず、ツンデレは性格属性に分類されることになるだろう。 「別にあんたの事が気になってるわけじゃないんだからね」の台詞で固定化されているこの「ツンデレ」とは、特に「ツンデレ」と呼ばれなくても昔から存在そのものには気づかれていたと思われる。むしろ、在り来たりだったのではないか。「素直になれない乙女心」と言われたら納得できる人も多いと思われる。単語としては、「まったく、素直じゃない」という意味をひとつにまとめただけと思われる。わかりやすい、と言うのは大切で、わかりやすいかどうかでビジネスの世界も右往左往するぐらいだからわかりやすい「ツンデレ」という単語はすぐに広まった。ただ、単語としてすぐに普及したのは、すでに潜在的に地盤があったためだと思われる。 ツンデレを細かく見て行こう。一般の定義としては、どうにも綺麗にまとまっていないようなのであるが、「最初は素直じゃないけれども、付き合い出したら素直になって行きました」と言うもの。今風に言えば「最初はツンツンしていたけれども、付き合い出したらデレデレしていきました」となり、要するに「素直である」の部分と「素直じゃない」の部分を擬音化して利用しただけだったりする。実に安っぽいと感じるのは僕だけだろうかね。 ツンデレと呼称するためには「最初は素直じゃないけれども、付き合い出したら“必ず”素直になる」ことが必要になる。キャラクター属性としては異例の「時間的推移を必要とする属性」であるはずなのだが、出発点と終着点があらかじめ決まっていてこそ、ツンデレと呼ばれる。しっかし、いささか人間的情緒に欠けている薄っぺらい商品的価値しかないような感じがしてどうにも嫌だなぁ。「時間的推移を必要とする」以上は推移中も当人の意思が揺れ動くことが考えられるわけで、それを無視して「ツンデレ」と呼んでしまうのは周りの人間の考え方の押し付けだよね。 僕が考えるに、「ツンデレ」とは過去にしか存在しない属性である。進行中の間はどう転ぶかわからないのにツンデレであると認定することは出来ない。終着点まできて過程を見、そこでようやくツンデレだったと認定できるのである。ややこしい属性だ。しかし、一般ではそのあたりをすっ飛ばして利用されている。これは、あらかじめストーリーが決まっている物語上でしか基本的に利用されないせいだろう。「別にあんたの事が気になってるわけじゃないんだからね」の台詞を現実で聞いて「こいつは俺の事が好きなんだな」と理解する奴はよっぽどの自信家だろう。暴走したときが見物だ。 さて、「ツンデレ」の醍醐味は「素直じゃない」ことである。イチノイカズイ殿からは「天邪鬼のとは違うのか?」と質問を受けたが、天邪鬼の本質は愛情不足に対する植え、不満から来る反抗心ともいえるもの。天邪鬼の広域定義にツンデレを含めることは出来るかもしれないが、恋愛分野からは外れる。元から対象者に対して愛情を持っているか。ここが決定的な分かれ目になるだろう。 まとめる。「ツンデレ」とは、時間推移型性格属性という異例の属性で、終着点についてから出ないとツンデレであったかどうかは判断できない。ゆえに、終着点に着いていないのに「ツンデレ」と認定される場合は、道筋があらかじめ決まっている物語か、あらかじめ対象者の心情が明確にわかっている場合に限る。 単純でないからこそ人気がある属性なのだろう。ただ、気になるのは……所詮、これらの話は消費される商品であるから成り立っている話だ。真っ向からやって、いちいち属性がどうのなんて気にしてる場合かぁ。高度に発展した社会。頭の中にしかないはずのものが金になる。そういった時代に産み落とされたそれらは消費されるものであり、それゆえに……なんだか寂しさを感じるものだ。 まるで、人間そのものを見ていないようだ。 |
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