三月一六日、金曜日の話
いざ温泉へ

 六時に起きて犬の散歩をした後、出発しました。

[◆]石川県・加賀温泉郷

 昨日の晩に確認したのですが、今回の目的地は石川県にある加賀温泉郷らしいです。当初の企画段階では兵庫県のしあわせの村だったはずですが、何時の間にやら石川県へのバス旅行に。費用は三千円ほどアップした模様です。うーん。

 バスでの移動が六時間もあるようなので、暇つぶしに本でも読もうと思ってゲド戦記(ハードカバーの原作和訳本)を持っていったのですが酔うので結局読むことがなかったとは家を出た時には露知らず、集合場所へ。京都から一旦大阪に行って、それから京都をまたいで石川県に行くこのUターン旅行。何か釈然としませんがバスの中で他のゼミ生としゃべり続けるのはまたとない機会です。まあ、バスの中も疲れるものなので半分くらい寝ていそうな予感。

 集合時刻には集合場所に僕を含めた七名のゼミ生が集まりました。ゼミ生数は全部で九人なので、二人が来ていません。あと、ゼミの先生も来ていません。忙しいんだろうと思いますが、残念です。

 バスに乗り込み、とりあえず出発。バスの中で話を聞いたところ、わりと旅行の出発日付近で企画が根底から変わったらしい。そういうわけで、女子四人は隣に座ったもの同士でしゃべり続け、僕ともう一人がしゃべり、もう一人は音楽を聞きながら夢の世界に旅立って行きました。バス旅行に備えて枕代わりのクッションを持参するあたり、旅行に慣れていると言えるでしょう。アラスカに行ってきた男は違います。

 大阪から高速に乗り、京都〜滋賀〜福井とバスを進め(途中休憩一回)、福井で高速を降りて下道を走り石川県へ突入。一路加賀温泉郷へと進みました。われらがゼミは話すこともなくなって全員寝てました。福井〜石川県あたりで積雪が目立ち始め、気候の違いを感じます。言うほど寒くはないんだけれど、雪はあります。

 まずは加賀温泉郷に入り、山中ホテルにて昼飯。値段の割りに量が少ないと言う、ゼミ生全員の意見の一致がありました。僕は九百八十円の天ぷら定職でしたが、そんなに多くはない……天ぷらはおいしかったが。

 その後再びバスに乗り、あわづグランドホテルへ。今回の旅行は湯快リゾート(ゆかいりぞーと)というグループの旅行プランを利用したものですが、この湯快リゾート、複数のホテルを持っているらしい。客が順次、いろいろな旅館で降りていく。

 あわづグランドホテルにてチェックインし、女子と男子で別れて部屋へ。ホテルと言うからには洋式ベッドかと思ったら畳敷きでした。でもすでに布団がしいてある。かとなく漂う微妙感。それはともかく、ここはどこでしょう。加賀温泉郷です。当然温泉に入りに行くことにします。速攻です。あ、でも浴衣とバスタオルは確認します。フェイスタオルとバスタオルが各人一枚ずつ。バスタオルは持ち帰れないが、フェイスタオルは持ち帰っていいようです。

 女子と合流して温泉に行きました。温泉は湯だけを引っ張ってきた屋内大浴場。露天風呂などは別館のほうにあるらしいので、夕食後の風呂は当然別館だろう、と決まりました。

 あんまり温泉らしい演出はありませんが、なかなか気持ちいいお湯でした。ていうか、手足を伸ばしてもどこにも着かない広いお風呂に入れるだけで満足と言うもの。しかも泳げたりすると最高です。そんなに深くないので泳ぎにくかったですが、とりあえず誰も入っていない大浴場で平泳ぎ。ふはははは!!

 一時間ほど入っていて満足したところで部屋に戻り、服を着替えて女子を誘い、とりあえず付近の散策に出かけました。ホテルでパチった付近簡略マップを片手に路地を進み、なんかとりあえずお寺みたいなところとか山の中の神社とか回りました。略地図の縮尺率が意外と低くて、意外とそれぞれの位置関係が近い。二時間もあればこの付近のめぼしいところは全て回れそうです。幸せの鐘なんてものがあったので、力いっぱい叩いてきました。遠くまで響き渡ったことでしょう。他のゼミ生は耳を押さえていましたが。聞いてくれよセニョリータ。

 途中のスーパーで夜食を購入し、酒屋で缶チュウハイや缶ビールを購入し、ホテルに戻りました。すでに外は暗く、寒くなってきていました。

 ホテルに戻ってしばらく休んだあとに夕食。バイキングと言うことで肉類を中心に食べまくる。野菜も少々。ご飯を入れる余裕は与えません。全員が準備できたらソフトドリンクで乾杯し、猛然と食べまくりました。そろそろ、本気で太りたいなーと思います。太ると言うか、体力が欲しい。どうにも病弱な上に筋力がないので、今後働くとなるならばそれなりにあったほうがいいでしょう。

 ちなみに、このとき、僕が常日頃から持ち歩いている道具の中で、初めて正露丸が役に立ちました。これは電車内などで突発的な腹痛に見舞われたときに使うためのものですが、女子の一人が腹痛を訴えていて、飲ませてあげました。備えあれば憂いなしっ!

 夕食後はしばらく休憩して別館の露天温泉に行くことに。しかし、休むついでに見ていたミュージックステーションから離れられず、「女子が呼びに来たら行こう」という「動きたくないオーラ」か部屋に充満しました。僕も夕食で詰め込んだので、胃の調子がおかしい。と言うか、重いんです。

 で、しばらくしたら女子が来ました。「あんたらも見てたの?」と僕らの部屋の中を覗いた女子が一言。活発さでは女子のほうが上のようです。

 別館まで少し歩き、温泉へ。別館とは少し離れたところに作られた新館らしく、本館と比べるともう少し飾り気があるようです。で、露天風呂。まぁ〜、温泉っぽさを演出したって感じの風呂で、ちょっと小さいのが気になるところ。最初は風呂から出ていれば寒く、風呂に入れば熱いと言う矛盾を駆使した地獄のような環境でしたが、慣れてしまうとどうと言うこともないものでした。夜風が気持ちいいです。

 で、露天ではアラスカに行って来たゼミ生からアラスカの温泉の様子を聞きました。アラスカは当然気温が低いわけで、温泉の中にいるときはいいけれど温泉から露出した部分は凍り始めると言うような極環境で、寒い。しかも、室内と温泉までの間にはふきっさらしの通路があるようで、死ぬかと思ったと語ってくれました。ちなみに、温泉は入れるように人の手が入っているそうですが、いざ入ると現地の人からは「クレイジー!」と言われるそうです。

 しばらくしてサウナに入り、一応我慢大会敢行。イケメンと称されるゼミ生が最初に出て、その次に僕が、最後はアラスカ君でした。その後は風呂から出て女子と合流し、本館へ戻りました。この時で大体午後十一時ごろ。ちなみに、浴場に脂肪率も量れる体重計があったので計ってみました。体重は54.5Kgの体脂肪率11.6%。脂肪レベル1。このとき、この測定結果を見ていたアラスカ君が「体脂肪率1%!?」とレベルと脂肪率を読み間違えたため、「皮じゃないか! もっと食え!」とゼミ生全員から言われる羽目になりました。どの道、太らないとなぁ。

 休憩したあたりで女子が男子の部屋に遊びに来て、お菓子と酒を飲み食いしながらトランプで遊んでいました。ザブトンは面白いね! ウノも持ってこればよかった。持ってくるのを忘れたのが痛い。で、午前三時あたりまで騒いでいたわけですが、各人の筋肉の付き方の話になった時に僕の腕の力瘤を見せたら「色白くて不健康そう」と評されました。明日の朝食も食べまくること決定です。

 ふっ……やはり友達と旅行するもんだ。自分の評価を聞くことができるから……。

 それにしても、やせたい人がいる横に太りたい人がいると言うのも変なもので、世の中うまく行かないものです。体質の問題でしょうか?

 三時過ぎになり全員の眠気がピークに達し始めていたので、男子の部屋で寝てしまう前に女子は部屋に戻りました。男子はたたんでいた布団を敷き直し、寝る準備。そして就寝。



 とか思ったら、「水の滴る音が気になって眠れない」とアラスカ君が言い始め、「そんなことで話しかけられ続けられたら寝られない」と思った僕は、少しもぞもぞしたあとに洗面所を見に行きました。蛇口をしっかり締めてもちょっとづつ水が出てきますが、少し蛇口を拭くと水が止まりました。と言うわけで就寝。アラスカ君がなにやら小さい音でテレビを見始めました。