三月 七日、水曜日の話
恐るべき企業

 企業は説明会に行くまで分からない。そう思いました。

[◆]おそるべき企業

 本日は大学の就職課に勧められた企業の企業説明会です。しかし、昨日の晩に僕はこの説目会についてとんでもない問題を抱えていました。何と言う事はない、説明会参加を申し込んだものの……。



 開始時刻を聞き忘れた。



 昨日はあわてて企業のホームページとか確認したのですが、説明会そのものに関する予定表などはなく、これは当日に企業に電話して聞くしかないという、なんともうっかりとした事態に陥っていたわけです。だから、「担当者が外出していて変わりにメッセージを承ります」と電話で出られた社員様にいわれた時に「かけなおします」と言えば良かったのに! 担当者に直接聞いていればこういうミスはなかっただろうに〜〜〜〜〜!!!

 悔やんでも仕方ない。何の連絡もせずに参加しないことこそが最悪の事態であり、下手をすると大学に文句が行ってしまう。それは避けねばならない。とにかく、企業説明会と言ったら世間では午前十時開催がセオリーである。そこをめどに会社の前に入っておかねばなるまい。開始時刻がもっと遅かったら近くで本でも読んでいよう。

 と、いうわけで、親にはあいまいなことを言いつつ家を出ました。電車のなかでは僕の声が迷惑になりそうなので使えません。ホームは電車の音がまずいです。と言う事は、九時半までには完全に電車から離れている必要があります。時計を確認しつつ進むと、何とか九時半に目的企業の近くの駅に付きました。とりあえず、企業前に移動。十時二〇分前。

 その企業はとあるビルの一室を取っている企業、というより、企業説明会が行なわれる場所というのが、本社とは切り離された研修部屋なんです。この企業、研修部屋を本社から離れたところに持っているんです。

 で。ドア前で電話するわけにも行かず、ビルの前で電話しました。出てくれた方は特にいやそうな声も出さず、親切に開始時刻を教えてくれました。開始時刻一〇分前でした。

 すぐに企業のほうに行き、案内してもらいました。中はまさに仕事部屋のような勉強部屋のような。あまり広くないようで、とりあえず“そこにあった椅子”に座るような状態でした。一部屋しかないので、社員同士の距離がえらく近い。会話量も多いけれど、ビジネス言葉ではない。パリッとしたイメージよりも少し砕けた感じのするところでした。かなりなじみやすそうです。なんというか、給料で縛られている関係だけではないな、という感じはします。

 で、この部屋のパソコン、全てが違う箱であり、モニターもばらばらであり、統一性がありません。そのうえ、メーカー物がありません。ここから導き出される結論は一つ。全部、自作なんです。後で詳しく聞くことにします。

 今回、企業説明会に来ていた人は僕を含めて八人。ちなみに一人は企業の位置が分からなくて社員の人が迎えに行っていたという、普通なら考えられない抜けっぷりです。僕も開始時刻を知らなかったのだから、五十歩百歩とはいえ……。

 企業説明はかなり丁寧&親切なものでした。疑問は随時受け付け、内容は守秘義務を破らない程度に突っ込んだもので、おそらくは今後の就職活動にも大きく役に立つ知識だと思います。この企業、すでに三十年以上やってきているらしいですが、実際にシステム開発に乗り出したのは最近らしいです。乗り出したというよりも鞍替えに近いですね。いまや、元々の事業内容を継いでいるのは数%しかいないそうで。

 しかも、説明会中もこの勉強部屋にいる社員さんたちの動きや会話内容は丸見えなわけで、かなりフレンドリーというか、勉強部屋なせいか大学の延長みたいな雰囲気を感じます。本社のほうでは流石にこうは行かないでしょうが。とりあえず、モノになるまでしっかりと勉強させてくれるようです。ありがたい。

 で、ここからが驚いた。「この説明が終わったら飯に行きましょう」



 は?



 飯? 飯ってなんすか? 企業説明会の途中に昼食を食べに行くんですか? 嘘ぉ!? 聞いたことねぇ!!!!!!



 本当に飯に行きました



 レストランっす。窓際のいい席でっす。喋り捲りです。企業説明会にしてフレンドリーすぎもいいとこです。三月に入り、企業も採用活動内容をチェンジしたのでしょうか。他の企業も飯をおごってくれたりするんでしょうか。僕には分からないっ!

 飯のあとも説明会は続き、最後に「相手に特定の言葉を言わせるゲーム」をしました。質問者は回答者に対して特定の言葉を言わせるように仕向けます。ただし、質問者はその特定のワードを言ってはいけません。また、回答者にその特定の言葉を悟られてはいけません。このゲームでは僕が質問者になり、相手に「UFJ」といわせること目的に話を進めましたが、回り道過ぎて三分間では無理でした。固有名詞なんだから、普通の会話から出させることは難しいかった。今はもう策は考え付きましたが、その時に思いつかないとどうにもなりません。

 で、説明会後に「さらに採用試験に進みたい方は連絡を」とのことだったので、その場で面接に進みたいと答え、次の金曜日に面接をすることになりました。ちょっと楽しみです。

 ちなみに、やはりこの勉強部屋にあるパソコンは全て自作であり、お金は企業が出しているとのこと。デュアルOS(複数のOSが使える)のパソコンもあったりしてびっくりです。また、ついでに Windows Vista についてその性能のほどを聞いてみました。首を振られました。「XPで十分です」。ソフトウェア開発企業に言われたら、本当に駄目だな……。

 こうして本日の企業説明会は終わりました。履歴書、昨日の午前一時に頭痛に悩みながら書いたのに、今回は必要なかったなぁ……。