三月 四日、日曜日の話
満二三歳

 とうとう僕も二三歳。若い、とは言えない歳になってきたかも。

[◆]二四回目の誕生日

 歳よりも一回多いのは満零歳になった日を一回目の誕生日と数えているからです。それはともかく、とうとう僕も小学校、中学校、高校、大学と経て、未知なる世界に足を踏み入れようとしています。……踏み入れられるんだろうかなぁ。就職しないとどうにもならん……。

 まずこの日、前日に午前四時までスーパーファミコンの「 LIVE A LIVE 」の近未来編をプレイしていて午前十一時に起きました。携帯電話の着信音で起きたんです。電話に出たら父で、どうやら父方の祖父母のところにいるそうです。まったく気が付かなかった。父方の祖父母は生きてはいますが祖父はもはや健全とは公認しがたいアルツハイマー状態で、少し前までは「祖父が若かった頃」の人脈で僕の就職口を探そうとしてました。この歳ですし、祖父が頼る相手も現役を退いた人たちであり、ただただ迷惑なだけでしかしそれを言ってもすぐに忘れるものだから、僕の家には一日五回は祖父から就職に関するであろう電話が掛かってました。親族一同、祖父からの電話には出てはいけないという密約が生まれていました。

 それはそうと、本日はぼけーとしていたら友人から「今から遊びに行ってもいいかい?」といういつもながらの突撃電話があり、暇だった僕はそれを承認、遊びに来てもらいました。ハンドルネームでいうところのロンともう一人、仮に友人Bとしますが遊びに来てくれたものの、こちらも暇だったから来ただけということで特に何かしようぜ、という案があったわけではなく。さらには、ロンは用事があるとのことでその場で帰りました。

 友人Bを部屋に招き、さて何をしようかと思ったものの友人Bは速攻で僕の家にあった幽々白書を読み始めてしまい手持ち無沙汰に。まあ、別にいいんですが、この前、友人のイチノイカズイ殿との会話で女性は退屈を共有することができないうるさい生き物であり、男同士であるからこそ退屈な無言空間を共有できるのだという話をしていました。男同士でないと共有できない空間もある、ということでこうも無言になれている男が集まるようでは女にはもてんな、と思った次第です。女を相手にする時は流石に、遊びにきたくせに漫画を読むなんて真似はしないと思いますが。

 さて、漫画を読み終えたのを見計らって何かをしようと持ちかけ、久しぶりに将棋をすることにしました。ただし、僕は木製の盤を紛失していてビニール製の薄っぺらな盤しかなく、とりあえずベッドの上にノートパソコンを包んでいた堅いダンボールを置いてその上にビニール盤を置き、窓全開にして対戦することに。これが平屋なら、昼時の縁側で将棋をさしていることでしょう。現代の二階建てのせまっ苦しい僕の部屋ではこれが限界のようです。雰囲気が似ているだけ。

 将棋はものすごく久しぶりでした。大学生になってから指したことなんてあったでしょうか。とにかく、久しぶりに指していったわけですが、相手は高校生時代、僕と同じ将棋部員として駒をさしていた人間であり、僕が二回戦で負けてしまった大会で準決勝まで行った様な相手です。実は全国大会への切符も一度は手に入れていました。開催場所が遠かったので辞退しましたけれど。

 一回目はかなりコテンパンに、二回目はまあまあ攻められたけれどもやっぱり負けて、三回目は守りを固めたものの攻めをおろそかにして攻め込まれて負け、四回目には「なるほどな」という言葉を引き出させました。負けましたけれど。

 いやー、お昼の春先の空気の中、将棋を指すというのもおつなものです。熱いお茶が欲しいところですが残念ながらありませんでした。しかし、この空気……あとから鑑みると爺くさいですねぇ。そこがまたいいわけなんですが。今度はロンとさしたいものです。奴も強いからなー。奴のパズル系への集中力はちょっとしたものです。上達も早い。

 その後は将棋の振りゴマをしたり、人生ゲームを引っ張り出してきて遊んでいました。やはり、こうしたゲームはパソコンで遊ぶゲームよりもかなり面白いもので、今後はオセロとチェスぐらいは揃えようかなと思います。涼宮ハルヒの憂鬱シリーズのキョンと古泉君がうらやましいです。毎日ボードゲームができる、というだけでも入団したいぐらいです。ま、その頃ならもっと違うことをしたかったんでしようけれど。将棋指してたし。

 六時になり、友人B帰宅。彼は駅から帰りましたが、僕はその帰りに独自にイチゴのショートケーキとモンブランを買い、家に帰って一人で食べました。このあと、親がケーキを用意してくれているのは目に見えているという幸せな状況なわけですが、誕生日と関係なく買ったものです。実は前々から食べたかったんですよね、イチゴのショートケーキ。

 まあ、久しぶりに満足した誕生日でした。友人Bに感謝を。