二月一八日、日曜日の話
町内会の催し、そして京都博物館で屏風を見る

 本日はイベント三昧。

[◆]町内会の催し――百人一首

 本日は町内自治会恒例の、自治会加入者に対する催しがある日である。大抵は美術館に行ったり博物館に行ったりしたあと、会食をして解散となる。おおよそ午前九時に始まり午後一時には終わる、僕が今まで受けてきたあらゆるイベントの中ではかなりスピーディーに終わるものである。というのも、参加者が基本的にご年配の方ばかりなので体力的に長くは続けられないのだろう。ちなみに、若い世代と言ったらここ数年は僕と妹以外にいない。僕ら以外は四十、五十、そして八十とかそういう年代ばかり。若い世代はこういうイベントに興味がない、というよりも時間をとられたくないのであろう。眠りこけているのも若い世代は「時間をとる」ことだと考えているからである。

 と、思っていたら、幼稚園ぐらいの子がおじいちゃんおばあちゃんに張り付いて付いてきていた。ま、自分から付いてきたという感じはしないものの、それなりにご年配の方はうれしそうだった。

 今回の行き先は京都の嵐山にある時雨殿というところらしい。詳しい内容は知らないので、ちょっと楽しみである。とりあえず、文化的な何かであることは間違いないらしい。

 阪急嵐山線に乗って嵐山に付くと、先に来ていた嵐山にまつわる歴史が詳しい町内会の人がいろいろと説明を始めてくれた。嵐山にはその昔、城があったらしい。初耳。

 渡月橋を渡る。渡月橋の真ん中あたりには現在、壊れた欄干と「安全第一」の黄色いフェンスがある。これはかなり前の話だけれども車が橋の上でスリップしてそのまま欄干を突き破って川に落ちた事故のもので、車の中の人は軽症で済んだらしい。が……壊したのが渡月橋の欄干である。四国から運ばれた選りすぐりのヒノキである。壊した欄干は15メートル程度だが、家一個買えるぐらいの費用はかかりそうだ。実際のところはわからないけれど、ほっとできる値段ではあるまい。

 時雨殿は渡月橋東側の交差点を北側に歩いたところにあるかなり新しく大きい施設で、内容は百人一首の展示と京都嵐山の風景を楽しむことができる博物館らしい。中に入ると紫の着物を着込んだ女性係員が案内してくれる。意外と人数は揃っているようだ。

 靴を脱いで中にあがり、百人一首の説明文を読んだあと先に住むと、人が詰まっていた。「二〇人ずつ入っていただきます」ということらしい。で、なにか携帯端末を配っていた。手帳のように開くタイプの携帯端末で、開けば右側と左側にモニターが付いていて付属のペンで画面を押せばいろいろと操作ができるという、まるで任天堂DSのような携帯端末だなって渡されてみたら「 NintendoDS 」。どう見ても任天堂DSでした。

 渡された時雨殿のカバーが取り付けられている白い任天堂DSは無線LANが取り付けられているらしい。床にテレビモニターが二十個ほど設置されている部屋に通され、唐突に「大きい百人一首カルタ取りゲーム」が始まった。どうやら、任天堂DSと下のモニターは無線LANで連動しているらしい。任天堂DSに表示された百人一首カルタを足元のモニターの中から探し出してモニターの上に移動し、任天堂DSの「取る」ボタンをクリックするとそのカルタを取ったものと見なされ、下のモニターのカルタが別のものと入れ変わる。たくさん取れた人が上位になり、最後には順位が表示されると。

 その次は「京都空中散歩」と題して京都の衛星写真がモニターに表示され、DSのほうで地名を選ぶとモニターに誘導キャラクターが現れ、誘導についてくと目的の場所にたどり着くと言う、無線の能力を生かし切ったシステムになっている。単なる携帯ゲーム機だと思っていたが、これは意外と使える端末コンピューターであった。公共施設にまで利用されるほどの価値を持っているとは。やるね任天堂。

 その次は壁のほうに歩き、壁に取り付けられた百人一首の歌文字にDSを近づけると、DSでその歌の発音および歌の意味を聞くことができる。人が大勢いる中でのものなので耳を近づけないとなんと言っているのか分からないのであるが、イヤホンを取り付ければ問題ないだろう。システム的にはかなりのクォリティーを出していると感じる。ていうか、意外とハイテクだぞ時雨殿!

 ここでDSは返却し、隣の部屋ではビデオゲーム百人一首をプレイすることができる。それっぽい部屋に入ると畳敷きの部屋で、壁際の床にモニターが埋め込まれている。壁にかかった液晶には最初、百人一首の歌人の絵が描かれた屏風が写っているのだが、ゲームが開始すると屏風から「よろしくお願いします」と百人一首の対戦相手となる人(人そのものは実写)が相手をしてくれることになる。見ていて恥ずかしいのだが、ゲームはゲームなので対戦。歌が読まれるので相手よりも早く正解の札を取ればいい。ただし、取れる札は四枚しかない上に三人目までは下の句が読まれるまで待ってくれるので、そこまでは難しいものではない。四人目は紫式部で見た瞬間に「負けたな」と思った。事実、下の句が読まれる直前に札をとられた。ここから先は実際に百人一首を覚えていないと勝てまい。

 百人一首ゲームのほかは、百人一首にちなんだゲームが勢ぞろい。「この札の中で恋人がいたのは誰でしょう」とか、それなりに勉強を要求するゲームがあるが、百人一首そのものが歴史であり、勉強している人を対象にしているのでこのぐらいのものだろう。

 そこから先はようやくビデオゲーム系は終了するようである。最後に競技百人一首のルールと解説が書かれていたが、「畳上の格闘技」とはよく言ったものだと思う。ルールから、その試合の激しさが容易に想像できる。ていうか、競技のほうは自陣と敵陣があり、カルタのある位置でお手つきになったりならなかったり、払っただけで取れるとか、そもそも取り札は百枚中の五十枚しか使わないとか(だから、読まれた札が必ず取り札にあるわけではない、と言う状態になる)、面白そうなものである。覚えないといけないのがつらいけれども。

 二階に上がると江戸時代に作られた百人一首や雛人形用の百人一首などが展示されている。また、昔の百二十畳の間が再現されていたりと凝っている。昔のものなので、畳の大きさが今と比べればずいぶんと小さいのだが。それでも広いもので、この部屋に布団を敷いて寝たいよ。ほんと。

 二階の廊下からは広がる嵐山の景色と桂川が見える。春になれば桜が、秋になれば紅葉がきれいに見えるだろう。今の時期はどっちもないけれども。時期になれば盛況になりそうだ。

 で、時雨殿の出口にはお土産品が売っているわけだが、なんと任天堂DSを売っている。一人一個までの販売とあるが、意外と穴場かもしれない。全色揃っているようだ。今でも電気店のほうでは売り切れているんだっけ? そして、目を見張ったのが純金製百人一首。

 ¥800,000。

 店の人に「これ、売れたことあります?」と聞いてみたくなった。聞かなかったけれども。

 その後、町内の皆さんで会食を行い(湯豆腐がおいしかった)、その後に解散。午後一時である。この後、町内の人と別れ、さらに父とも別れて僕と母、妹の三人は河原町に向かうことになった。東山七条、京都博物館に行くためである。

[◆]京都博物館

 河原町からバスに乗り京都博物館へ。なにやら韓国の人? から「このバスは清水寺に行きますか?」と聞かれて行くのか行かないかその場の人と悩んだ挙句、悩んでいる間にバスの運転手さんに「行きます」と言われて「運転手さんに聞けば最速だったんじゃないか」とがっくりしたものであるが、それはさておき。

 京都博物館では本日終了ではあるが京都御所にあった障壁画を展示中らしい。障壁画というか、屏風絵らしいが。妹が日本画を学ぶ美術大学生であるから、その関係で見に行きたかったのだろう。

 さて、絵について語る前に、僕はあまり絵に関心がない人間である。一見すれば終了、と言う人間なので、実のところ有名な絵を見ても、どれだけ手の込んだ絵か、と言うところでしか判断できない。有名な絵はすべからく手が込んでいる。絵がうまいかうまくないかは実のところよく分からない。時には面白かったり気に入る絵があったりするのだが、全体的には絵心はないであろう。それよりも絵の説明のほうが面白かった。

 まあ、絵の説明と言っても、風景画のほうは大抵は「この絵はどこそこの風景でだれそれがあれこれの影響を受けてどーしたこーしたの感情表現をなんたらかんたら」と書かれているので、やっぱり一見したら終了、ではある。というより、こういう絵は博物館でしか見る機会は無いものの、やはり普通に家なり御所なりに飾ってあり、毎日何気なく見ているからこそ意味があるんじゃないかという気がする。毎日ぼけーと見ているからこそ真価が発揮されるのでは、と思うが、庶民は見れただけでもありがたがるべきなのだろう。多分。

 午前中の行事の疲れが響いて、三人とも屏風絵半ばで椅子で休憩。ここはそんなに広いわけでもなく、一生懸命見れば宝の地図が出てくるわけでもなく、どっちかというと人が多すぎて押しつ押されつの中で疲れたとも言える。博物館は大変なのである。

 さて、絵についてであるが、基本的には屏風に描かれた絵が飾られてある。江戸時代あたりだろうか。奈良八景とか琵琶湖とかの風景が描かれていたり、祭りや何かの行事の絵が描かれていたりする。中国の逸話をモチーフにした絵もあったりして、説明がないと絵の意味するところが分からない。当時は画家が説明してくれたのだろうけれども。

 面白かったのは山にきこりに入り、仙人たちの囲碁を見入っていた男の絵である。囲碁を見終わって山を下ると物って入った斧の柄が朽ち果て、現世は数百年の時が過ぎていたと言う。どんだけ気の長い囲碁だと思うところもあるが、時間の流れが数万倍のレベルで遅い空間と現世のつながりを考えてみると面白い。ていうか、これは絵が面白いんじゃなくて状況が面白いだけだな;

 なんとか屏風絵を見終わったら、次は常設展のひな壇を見に行き、ようやく帰ることに。ずいぶん端折ったけれども、博物館の内容は身にいかんと分からんもんだ。

 帰りはケンタッキーで少し腹ごしらえをして、ここで母妹と別れ、同人ショップへ。前回(先週の金曜日)に行った時に買えなかった音楽CDを買ったり。電車でDと東方公式資料と東方CDと東方CD。同人ショップで買うものと言ったらこんなもんだなぁ〜。東方公式資料は文章が多いので割りと好きなほうだ。音楽CDも付いているしね。