八月三一日、木曜日の話
父親、ついに動く

 とうとう、就職活動のことを持ち出してきました。

[◆]四月になったら出てけ!

 この夏休み、本気で僕の好きなことばっかりやってきました。掲示板に入り浸ってはアスキーアート保管庫を構築し、一日の気力を使い果たしてはゲームに明け暮れたりと、その生活はニート予備軍。卒論のための本すら読んでない。通常講義の単位が取れてても、卒論で躓いたら何にもならないだろうに。

 と、いうわけで、最近そんな生活をしていたのがここ二、三日、父の目に写った事もあり、とうとう母親が友人達と出かけた本日の夕食時、噴出しました。就職活動しているのか、と聞かれればしていないとしか答えようがなく、お前は野垂れ死にする気かと声を荒げられてもそれも人生の一つとしか答えようがありません。

 気になったのは、そんなことよりも父親の言動の端々から感じられる「今まで息子を見ていませんでした」という空気で、まあそれだけ僕と父親の間にはコミュニケーションがなかったわけです。まあ、そのおかげで就職活動してこずにここまで来られたわけですけれども。AA保管庫とかほとんど一日中触って構築した部分も多いしなー。

 で、重っ苦しい空気の中での食事です。米を口に運べば「お前、今の状況で平然としてられるの? 何考えてんの?」と来ます。就職活動をしていないのは覆し様のない事実なわけで、そこを突いても始まらない。とりあえず飯を食べ終わってから説教してくれ。

 就職活動をしていない僕にとっては就職活動をしていないのは納得済みの事実であるため、態度としても困ることが出来ません。困った振りをするのは出来ますが、したところで就職できるのなら世の中ニートなんていなくなります。今更、「就職活動しなかったら誰も採用してくれない。向こうから採用しに来てくれるとでも思ってんのか!?」とか言われても。お父さん、あなたは何か権力でも持っているというのか。もしくは、僕にはほっといたらまずいような因子でもあるというのか。中流階級のニート予備軍生活をしているなんちゃって大学生にわざわざ出向いて就職してくれと頼むような人がいたら、それは電波を受信しているのか前世を信じているか新興宗教関係の人しかおるまい。

 「四月になったら面倒は見ないからな! 出てけ!」と賜れました。生活をどうするか、よりも家を出て行くことにワクワクした僕は神経が太いのか馬鹿なのか。……馬鹿なんだろうなぁ。「きっと、物を与えすぎたんだろうな……」と父親は教育方針を間違えたとぼやきます。まあ、大学生にもなって一般的なアルバイトをしたことのない僕ですし(教授の資料整理やコンピューターを使う講義の学生補佐アルバイトはやった)、僕の周りにあるものは殆どが親に買って貰ったものになるでしょう。自分で働いて買ったものといったらお菓子とサーバと音楽CDと本ぐらいだ。

 てなわけで、重苦しい中をまずくなった飯を食べ終えて、父親は僕に「明日から就職活動をしろ!」と命令を下しました。とりあえず、一日中家にいるとまた文句を言われるので大学の就職課には行くことにします。あと、リクナビに登録して企業説明会にも行くことにします。流石に明日ある説明会は予約申し込みが打ち切られてて無理。とりあえず、履歴書を書かないとね。