四月一一日、火曜日の話 [◆]せーんろはつづくーよー
この日は、大学三回生春休みの最後の日であり、また雨の日だった。天気予報によれば、日本の西側がほとんど雨という雨の日で、僕は紙とペンと地図と方位磁針、そして路銀を持って家を出た。行き先は、東。ただ、東。東に向かって三時間、電車に揺られるつもり。三時間後についた駅で、神社にお参りする。それが、本日の僕の目的である。 京都の中心である京都駅から、JR線を東、つまりは滋賀県の方に向かう。座席に座り、外の景色を眺めながらノートに考え付いたことを書いていった。 「探し物を探す能力」。今回の旅をしようと思ったのは、おそらくは本能――“性欲”を根幹においた行動なのではないかと思う。旅をすることがどう性欲に結びつくかというと単純で、「近くに良い相手がいないから、遠くに探しに行く」というところ。自分探しというわけでもなく、何か観光に行くわけでもなく、そうした欲望をうすうす感じながら流れる景色の中の桜を見ていたのである。だから、「参拝した神社に巫女さんがいたらいいなー」とか思うわけである。こんな雨の中で巫女さんが掃除してるとでもいうんかい。いや、巫女さんと言えばやはり歳は高校生あたり(何のエロゲー設定?)、よく考えたら今日は平日で高校生は学校が始まっているから下校時刻以降じゃないとそもそも女の子を見かけることが出来ないんじゃないか!?(危険人物) いかんいかん、そんなことで取り乱していては……しかし、この計画を思いついた当初は「田舎の女の子が見たい」が根本だったんだよなぁ。あれだよ、都市部の女の子と言ったら何かに取り付かれたかのように髪の毛を染め化粧をして地べたに座り込んでげへらげへら言ってるモンスターになってるわけですよ。そろそろ、まともな女の子が見たいわけですよ、こっちとしては!(力説) まともな女の子がエロゲーにしか存在しないなんで、悲しいでしょ!?(とはいえ、エロゲーの女の子がまともかと言えば、例え純愛系であってもそんなことはなさそうだが) んー、とりあえずですね……その土地の女の子たちを見つつ、神社に参拝してくることにします。一応、男の方も見ますがね。 京都午前十一時発、快速に乗って十一時五五分に滋賀県の東側の米原に着。十二時九分発普通で十二時五四分に大垣に着。乗り換えて岐阜に到着。ここまでで二時間ほど。東に向かうために高山方面のディゼール車(線路は単線)に乗り、田舎の路線をひた走る。そして、京都を出てから三時間。大多線と乗換えができる美濃太田駅に到着。雨は止まない。 当初の予定ではこの駅で降りて神社を探すことにするはずだったのだが、地図を見ている間に大多線を南東へ下りてそこから東にいったところにある恵那という町に興味を惹かれていた。なんとなく面白い地名である。そういうわけで、三時間の枠を取り外して恵那市に向かうことにする。 さて、すでに僕の地元の京都からはずいぶん離れているわけだけれども、次第にがっかりしたような感情が動いていた。どれだけ景色が流れても、そこにはさして京都の風景と違ったものがあるわけでもなく、どこまで行っても日本は日本だと思ったのである。僕は観光地を目指しているわけでもなく、見えるのは畑と家と車道、そして桜ばかり。つまりは住宅地。なにか違いがあるわけではなかった。 ときどき、自分探しにと旅に出る人がいるらしいが、彼らはどこまで行っても日本な旅の中で、何を見つけるのだろう。自分が何者であるかなど、すでに見つけてしまった僕には分らない部分なのであろうか。 大多線を多治見に向けて、ワンマンディーゼル車がごとごと揺れる。二両編成の車両は、ワンマンだから前の車両のドアしか開かずに後ろの車両に乗る人が少なく、そのせいかずいぶんと揺れていた。連結部が甲高い軋みの音を上げる。駅の出口で乗客を捕まえるために、すばやく駅の出口に移動するために車掌が電車の中を行ったり来たりしていた。駅側の出口が前の方にあるか後ろの方にあるかで、乗車賃を回収する車掌は移動しているのである。ワンマンという割にはワンマンじゃないのだった。 多治見に到着して中央本線に乗り換え、恵那市方面に向かう。ただし、次に来る列車が恵那市手前の瑞浪止まりだったので、瑞浪へ。そこから三〇分待って、やってきた快速に乗って恵那市に行くことにする。帰りは中央本線を通って名古屋まで行き、そこから戻ったほうがいいだろう。 さて……瑞浪駅で面白いものを見た。 「学生の皆さんへ (1)地べたに座り込まないでください (2)食べながら歩かないでください (3)服装は正しく着用しましょう (4)ゴミのポイ捨てはやめましょう」 ……ここまで来て、結局は同じか……。しかも、学生と限定。恵那市に行く電車に乗ったら、僕と一緒に乗った女子高校生二人がさっそく電車内の床にべたっとすわってぎゃあぎゃあ騒ぎ始めました。本当にがっくりですよ。もはや、都市部と田舎での格差はないというのか。しかも、スカートを短くしてるもんだから中身まで見えてるの。舐めている。立っていた僕から見えたのだから、座席に座っている人たちも不快な思いをしたであろう。 スカートの中は聖域であるとかその辺のラブコメディー小説とか読めばすぐに遭遇するようなシチュエーションが存在するが、聖域になるかどうかは持ち主の価値によるよね、と、エロだとか下品だとかもうどうでもいいやと思いつつ書いておきます。 五時間かかってやってきた恵那市は一応観光所はあるらしいが、そこ以外は居酒屋の多い普通の住宅地らしい。ここでの滞在時間は一時間ぐらい。それを越えると、家に帰るのが十時近くになってしまう。 雨が降る中を傘を差して駅近くの地域地図から神社の位置を調べ、神社へと向かう。恵那市には駅の近くには二つの神社があるようで、虫も多い中を先ずは近くにある神社へと歩く。学校の終了時刻だったようで下校中の高校生、中学生が多かった。質は京都と同等ぐらい。地味な人も派手な人も同じぐらいの割合の模様。 近場の神社は住宅地の中にあるこじんまりとした神社で、一応は観光名所にはなっているものの境内内にジャングルジムやシーソーといった公園遊具もあるあたり、地域に密着した神社らしい。拍手をたたいてお参りをしておく。次は、遠くにある神社に向かうことにする。 学校の横を通ったのだが、小学校、高校、中学校と並んでおり、例外なく敷地が広い。そこだけは田舎っぽさを感じるが、すぐそばを自動車道が通っていて自動車がびゅんびゅん行き交っている。コンビニもあり、吉野家もある。地図で見れば人口五万以下という表記になっている恵那市であるが、田舎の域からは脱していると言えよう。 二つ目の神社は林に囲まれた土地の中にあり、すぐ横を自動車道が通っていると言うこと以外にはなかなか厳かなところだった。桜も本堂までの道を飾り立てており、正月になれば多くの人が押し寄せるであろう事は想像できる。正月には巫女さんもいるだろうが、アルバイト巫女さんに興味はない(ぁ まずは鳥居が連なった道を歩いて稲荷様にお参りし、次に階段を上がって小さい神棚ももれなくお参りし、本堂のところで腰掛けてしばらく休憩。自動車道がなければ静かで落ち着くところなのだが。 一〇分ほど飴(コーラ味)を舐めながらぼんやりと過ごし、時刻を確認。五時過ぎだった。一時間近く、恵那市に止まっていたことになるだろう。じつは、京都を出発してから恵那市に来るまでに五時間かかっている。名古屋回りにすることで何分短く出来るかわからないが、そろそろ帰らないとまずい。そういうわけで、帰ることに。お腹がすいたので、駅前の揚げたてコロッケ一個五十三円を二つ買って、これを お 昼 ご 飯 代 わ り にする。JR駅内で立ち食いそばを食べるのもあれなもんで恵那市で食べることにしていたのだが、歩いた範囲内に食べ処がなかったのである。居酒屋ばかりで。 電車に乗り込むとすぐに当たりは暗くなり始めて、名古屋につくころには真っ暗になっていた。名古屋から岐阜方面の快速に乗り、席が開いたら座って読書にいそしむ。そうして京都駅まで戻り、普通に帰ってきたのだった。帰宅時刻は十時。恵那市から京都までかかった時間は四時間一〇分だった。 今回の旅で得たことは、 (1)遠くに行っても地元とほとんど同じ。子供の質の低下も同じ。 (2)JRは新聞の運送にも使われている(多治見や瑞浪、恵那では多くの人が待ち構えており、電車到着と同時に荷卸ししていた)。 (3)桜はどこにもある。 (4)恵那市までのJRの料金は三千五百七十円である。 今回の旅で移動に使った時間だけでバイオハザード2を最短でクリアすれば四回クリアーできる。今回の旅で使ったお金でオンラインゲームを四ヶ月することができる。四ヶ月分を一日で使ったとなれば、笑えるような気がする。旅をしたことに意義はあったと思う。四ヶ月分が一日に濃縮できたと言うのは、世の中そういうものだということなのだろう。オンラインゲームの料金に目くじら立てていた時期があると思うと、アホらしいですなー。 まあ、疲れました。今夜はよく眠れると思います。お疲れ様でした。 |
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