三月二五日、土曜日の話
虫を飼ってみる

 普通はしないことをしてみたいのが僕な訳で。

[◆]血を流す

 お風呂で体を洗っていたら、手に血がついていた。出血場所を探すと右胸の鎖骨すぐ下辺り。血溜りができていた場所かなぁ。ただ単に皮膚が薄くなっていた場所かもしれませんし、油の塊が洗った拍子に抜けて血が吹き出したのかも。ともかく、血が流れたわけですよ。体を洗っているものだから、次々と新しい血が流れるわけで、これはこれで楽しい。まあ、楽しんだ後は対処に困ったわけですけれども。

 ひとまず風呂から出た後にバンドエイドを張ろうと探していたら、血は固まって止まっていました。やるな血小板。

 それにしても、と思う。鏡で自分の胸辺りを見ているのだが……去年の夏辺りから首から左胸にかけてあせもかアトピーか知らないけれども、皮膚に異常をきたしていたんですよ。しかし病院にはいかず、ずっと放置していたんですが……うーん、何というか……皮膚の質感が右胸と違うんです。どんな風に違うかというと、右胸は手でこするとかなり摩擦力があります。多分、こっちが普通の皮膚感触だと思います。対する左胸は所どころ赤くなっているけれども、なんかすべすべしている。摩擦がほとんどなく、色も少し赤黒い。見れば皮膚疾患が起きていた事はすぐに分かります。

 さて……いまさらながら病院にいくべきか? 悩むところです。まあ、お風呂に入ったあと、乾くまで痒みが止まらないとか寝ている時に痒みを感じるとかいう症状はあるんですが。うーむ。

 まあ、実問題としては僕の肌は他人に見せられるほど綺麗じゃないです。そういうところですかねぇ。

[◆]虫を飼ってみる

 さて、虫である。タイプは毛虫系。採取場所は僕の洋服タンス。これだけ言えば分かるだろうか。早い話が、飼っている虫とは服に穴をあける害虫の一種なのである。服を取り出そうとした時にぽとりと落ちて来た。これが、なかなか大きい奴で。体長は2センチぐらい。黒いです。明るいところでは基本的に微動だにしませんが、気がつくとかなりの距離を移動していることが多いです。素早い。

 飼っている場所は近くにあった瓶の中で、虫食いにあっていた衣服の切れ端を詰めています。さあ、何人の人がぞわっときたでしょうか。

 虫、それも衣服に穴を開けるような毛虫を飼うというのもなかなか馬鹿馬鹿しい話ですが、実のところ飼いやすいと言えば飼いやすいですね。ハムスターのように音に敏感でなく、インコのように清潔さに気を使わなければならないでもなく、餌といったら防寒も兼ねている布の切れはしで、ときどき空気の入れ替えと水を何滴か入れてやればいいだけ。水を忘れると干乾びそうですが、よく考えるとこいつがいたタンスの中だってまともな水源なんかないわけで、その辺の兼ね合いが良く分かりません。体が黒いのは暗いところで動いても見つからない様にするためでしょう。夜行性。

 成体は蛾(が)かな……。蛾の事について調べてみたら、虫の拡大図が出てきて流石に気持ち悪くなった。解説文を何とか読みましたけれど、どうなるのかよく分からない。

 気になるといえば、こいつの侵入ルートである。簡単なのは成体の蝶だか蛾だかか僕の部屋にパタパタと飛んできて、タンスの中に卵を産んで去っていったと。基本的にずっと締め切りのタンス相手にそんな芸当ができるのだろうか。他に考えられるものとしては、洗濯されて畳まれて待機中の衣服に幼虫が侵入し、そのまま僕の部屋に運ばれた。こちらの方がありえそうではある。

 虫といえば、僕の部屋の中で生息が許されている虫は今回、瓶の中で飼育中の謎幼虫だけではない。僕は自分の部屋で小さな観葉植物を育てているが、その植木鉢の土にも節足虫が何匹か住んでいるわけで、植物に水をやるたびに眺めていたりする。今回の虫を見つけた時にすぐにゴミ箱に投げずに飼おうと決めたのも、こやつらで免疫ができていたからなのかも知れない。

 明日辺り、水と何か葉っぱでも入れて見る事にしよう。