八月二九日、月曜日の話
社長とお食事

 本日を含めて、残り三日です。そういや、昨日の日曜日で六人ぐらい死人が出たようですが。はしゃぎすぎたのかね……。

[◆]突然やってくる人間の尊厳を保つための戦い

 あーはい、まず最初に。思いっきり寝てました。起きたのが六時四五分。頭の覚醒状態からして即座に七時二二分発の快速急行には間に合わないと確信しました。どころか、二七分初の最終電車(遅刻しないギリギリの電車)にも危ういです。寝ぼけた頭で慌てる事もなく朝食を食べ、寝癖を直してスーツを着込みます。この時点で七時一五分。朝食食べたあとにまたベッドに倒れ伏したのがマイナスポイントのようです。

 そして、駅まで走って行けばそこには空っぽのホーム。時計は七時二八分。乗り遅れた……。
 そういうわけで同僚にメールを送って置きました。これで携帯忘れてたら辛いところだなー。忘れてないからいいけれど。

 遅刻確定の電車に乗りこみ、一路会社へ。電車に乗った以上は慌てても焦っても周りへの迷惑と体力の浪費にしかならないので黙って音楽を聞きつつ電撃文庫「キーリ7」を読んでいましたが……あれ? 前回の最後でキーリって死にかけてたんじゃなかったっけ。学校の話はどうした? と、作者と出版社が話の順番を間違えたんじゃないかと思い傾げていました(家に帰ってからの調査で、一冊分抜けていることが分かった)。

 そして、MDから流れる音楽がROでいうところの騎士団の曲になったとき、突然戦いが始まったわけです。人間の尊厳をかけた腹痛との戦いが。ぎゃー。

 電車の中での腹痛ほど手に負えないものはない。しかも今は絶賛通勤ラッシュ中であり、椅子に座る事なんか出来ない。やばいです。自分の中の体力という体力が一斉にトーンダウンしていきます。思わず人ゴミの中をしゃがみこんでしまいました。ドア横で良かった……それだけが救い。しかし、ちらりと見る外の風景は自分が危機の真っ只中にいる事を教えてくれます。今見えた駅からこの電車が止まるのは駅を二つ過ぎないといけない。その間……耐え切れるかっ!?

 耐え切りました。電車が信号待ちで止まった時にはぶち切れそうになりましたが、とにかくホームへのドアが開きました。それと共に腹痛がいくらか和らいでいたのですが、職場までもたそうなんていう自殺志願者の思考はせず、駅のトイレへ。駅のトイレはそんなに綺麗じゃないのが難点です。しかし、このままでは……っ、漏れる!

 絶望はそこに生まれる。トイレのその光景。男性用トイレの奥。二つあるドア。そのドアのノブのところには使用中か否かが知らされるためのラベルが。赤(使用中)。

 ぐおおおおおっ……。

 しかし、こんな時でも僕は冷静に待っている間に散り紙を買い、トイレが空いても先に待っていた人に譲り、三分ほど待ってようやく戦いに勝利したのです。危なかった……。
 結局チリ紙を百円払って買ったものの、先にこのトイレを使っていた誰かがチリ紙の残りを置いていてくれてそれで事足りました。まぁ、悔しいので自分の買ったチリ紙を置いておきましたけれど。また誰かの戦いに微笑んでやってくれい。

[◆]社長さんとお食事

 そんなわけで、寝坊した分は腹痛のために流されてしまいました。それでもまた御腹が微妙な痛みを持っていたためにトイレに入ってましたけれどね。うーん、昨日食べたサラミの呪いかなぁ。八時ごろにトイレに駆け込んで、それで事なきを得たと思ったが……甘かったかなぁ。

 そのトイレの帰りに屋内に侵入していた蟹(カニ)を見つけました。手のひらの上にちょこんと乗るぐらいの大きさのカニで、なんでここにいるのか分かりません。いや、確かに歩いて一分で海だけれどさー。北東に五〇メートル歩けばそこはもう海の上です。外に逃がしておきました。……まあ、もう助からないでしょうねぇ。

 その後、やはり睡魔との戦いに必至になりつつ、十二時になりました。今日は社長さんがお昼ご飯をおごってくれるそうなのですが……なんか、ホテルでの会食らしいです。でー、ホテルの位地を教えられた物の、道を間違えたりして着くのが少し遅れました。社長さんはすでに席に着いてて、手を振っておられましたが。

 で、その後は昼食のオムレツを食べながら社長さんから色々な話を聞いていました。社長さんは昔、僕の行っている大学を受験して落ちたとか、浪人生時代は遊びすぎて大学に行けず、二浪しても大学に行かなかったとか、アメリカに行っている間に親の経営するお店が乗っ取られたとか、人の三倍働いてバイトなのに社員よりも売り上げがよかったとか。聞きしに凄いプロフィールでした。つーか、この人、ものすごく広く活動してるなぁ。さすが社長。やはり、社長になれる人物とはこういう人なのだろうかと思った。

 最終的に社長が僕らに語ってくれたのは以下の物。

・稼ぎを出すには十年、二十年と働かなくてはならない。途中で転職したら、稼ぎは一瞬増えたように見えても、それ以上上がらない。
・目標を持たなくてはならない。「おもちゃが好きだから」ではおもちゃ会社には就職できない。おもちゃを買ってくれるのは、誰だ?
・目標を持ち、実行し、成果を確かめて反省しなくてはならない。
・仕事と恋愛は似たようなもの。「目標と、感情と、持続」
・だから、年内に彼女作れ。
・お正月に彼女と初詣に行く事を想像しろ。
・なんなら年末から計画たてろ。
・顔に自信がないのだったら、それ以外で勝負しなければならない。つまりは人的魅力!
・彼女を作るチャンスなんか山ほど漂ってるって。それを掴まなきゃ。
・仕事も一緒で、何がチャンスになるかわからない。

 ……「余計なお世話です!」と言いたかったんだけれど、まあ彼女がいないのは事実なので頷いていましたけれど。ちなみに、僕は自分の顔が悪いとは思っていません。体重が55Kgしかないガリですが。腕が細いんだよなぁ……。

 最後に社長さんが一つ。「馬鹿女はやめとけ」。そりゃもちろん。

「このインターンシップに来て君達が一番得をしたのは、私としゃべれたことだよぉ!」と堂々と言えるって言うのが凄いなぁと思いました。それは今まで自分が頑張って築き上げた地位と自信があるから出せる声です。僕が同じ事を言っても、「あっそ」って言われるのが落ちですしね( ・∇・)ウフフフフ

 さてさて、本日を除いて残り二日です。長いような短い企業実習でした。割と自分の能力が役に立ったようで良かったですね。もちろん、迷惑も掛けた事と思いますが……。会社というものを学ぶ事は出来たと思います。例えば、休んだら朝に休む事を伝えるだけでなく、夕方にも“明日は出れるかどうかを報告しなくてはならない”という事など。

 ……そんなにマナー的な事は学んでいないような気がしますねぇ。挨拶をはっきりとするとか、仕事を始める間に上司に何をすればいいかを聞きに行くとか、もはや普通の事ですしね。(´▽`*)アハハ